特徴的な治療法

小児泌尿器・尿路再建治療法

小児の泌尿器疾患には先天性(生まれつきの)疾患が多く、その治療には、緻密で繊細な形成・再建手術が求められます。また、当科ではこの技術を成人の外傷や泌尿器がんの尿路再建手術にも応用しています。さらに、泌尿生殖器以外の他の臓器にも関連する複雑な病態については、小児科・小児外科・産婦人科・形成外科などの各専門医と連携し、チーム医療として対応します。

先天性水腎症に対する腎盂形成術

先天性水腎症とは、生まれつき腎盂と尿管の移行部が狭いため尿の流れが悪くなり、腎盂に多量の尿が溜まり拡張した状態をいいます(図-1)。通過障害の程度が強いと腎障害、重症な尿路感染症である腎盂腎炎、腹痛、吐き気・嘔吐、尿路結石の原因となります。

治療としては、狭窄部をしっかり切除して、健常な腎盂と尿管を吻合する腎盂形成術を行います(図-1)。吻合には細径の糸を使用して当科でのこだわりの緻密な縫合方法で行い、ほとんど再狭窄や再手術を要したことはなく治療成績は良好です。乳幼児の患者さまには側腹部3~4cm程度の切開による手術で、学童期前後以降の患者さまには主に腹腔鏡下手術で行います。

腎盂形成術

膀胱尿管逆流・巨大尿管症に対する膀胱尿管新吻合術

通常、膀胱に溜まった尿は尿道を経由して体外に排出されますが、尿管や腎臓に尿が逆流することはありません。これは尿管と膀胱の移行部に逆流が起こらない構造があるからです(図-2)。膀胱尿管逆流はこの逆流防止機構が形成不良で膀胱尿が尿管・腎臓への逆流する状態をいいます(図-2)。この逆流が存在すると尿道から侵入した細菌が容易に腎臓へ到達するため腎盂腎炎を発症しやすく腎障害の原因となります。

膀胱尿管逆流

巨大尿管症とは、尿管と膀胱の移行部が狭いため尿の流れが悪くなり、尿管や腎盂に多量の尿が溜まり拡張した状態をいいます(図-3)。通過障害の程度が強いと腎障害、腎盂腎炎、腹痛、吐き気・嘔吐、尿路結石の原因となります。

治療としては、下腹部4〜6cm程度の皺に合わせた横切開で、健常な尿管と膀胱を逆流防止機構を形成して新たに縫合する膀胱尿管新吻合術を行います。巨大尿管症では、狭窄部をしっかり切除し、太い尿管に対応するため膀胱を病側に寄せて固定したり、尿管を細くする工夫が必要になります(図-3)。また、膀胱尿管逆流では、その病状によっては内視鏡を用いて行うことも可能です。手術後の逆流消失率および通過障害の解消率は95%以上です。

巨大尿管症

尿道下裂・尿道狭窄に対する尿道形成術

尿道下裂は、通常男子の亀頭部先端にある尿道口が下方に位置していることと、陰茎が屈曲していることを特徴とする疾患で、立位排尿や将来の性交渉の障害の原因となります。

尿道下裂の治療は、まず、包皮を陰茎から十分に切開・剥離して陰茎の屈曲を解消します。その後、余剰の包皮を利用して不足している尿道を亀頭部まで形成します(図-4,5)。通常、1回の治療で完了するように努めますが、重症度が高度の患者さまの場合は手術を2回に分けて行うことがあります。また、包皮に余裕がない場合は口腔内の粘膜組織を利用することがあります。術後に縫合部から尿が漏れる瘻孔や形成した尿道が狭くなる狭窄などの合併症が比較的多い治療法ではありますが、手術法や術後管理の改良で重症度が中等度までの患者さまでは合併症は5%程度に軽減されています。

尿道狭窄の治療は、狭窄部をしっかり切除することが重要で、その後、健常な尿道組織同士を吻合したり、欠損した尿道を余剰の包皮や口腔粘膜を利用して形成します。病状によっては手術を2回に分けて行います。

尿道形成術
尿道形成術

女児性分化疾患に対する外陰形成術

胎児期のホルモン産生の障害などによって女児として陰核が肥大したり、膣・子宮の発達が未熟な状態で出生されることがあります。将来の月経時の経血、性交渉、出産の障害になります。

治療としては、肥大した陰核は短縮させます。体内で膣と尿道が合流している場合はそれぞれが陰部に2つの穴となるように形成します(図-6)。膣の発達が極めて不良な場合は腸などを利用して膣を形成することがあります。このような小児期の女児外陰形成術は泌尿器科が担当しますが、ホルモン治療、将来の月経、妊娠、出産を見据えた経過観察などは小児科・産婦人科と連携して総合的な治療をご提案します。

女児性分化疾患に対する外陰形成術