業績紹介

Keio Urology Research Forum 記録

第15回 平成29年1月21日(土)14:00-16:20

場所: 慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟1階ラウンジ

毎年恒例となっているVisiting Professorship 2017が1月21日に開催された。若手研究者10名が、日ごろの成果を8分間に凝縮して発表を行い、続いて4分間の活発なDiscussionが交わされた。第7回目の今回は、Visiting Professorとして札幌医科大学医学部泌尿器科学講座舛森直哉先生にお越しいただき、大変示唆に富んだコメント、ならびに今後の研究へつながるアドバイスを頂いた。

Presentationの最優秀賞(1位)には「転移性膀胱癌における長期生存者の検討〜尿路上皮癌におけるOligometasisは存在するか〜」を発表した荻原広一郎先生、優秀賞(2位)には「筋層非浸潤性膀胱癌が病期進展を来たしcT2に移行した症例と初発cT2症例の予後比較」を発表した加山恵美奈先生が選ばれた。

その後、ホテルニューオータニガーデンコートに場所を移して、信濃町Urology Forumが開催された。舛森直哉先生より、「泌尿器科医としてできたこと・できそうなこと 〜私の行ってきた研究・診療のこれまでとこれから」と題した特別講演をいただいた。癌の転移を抑制できれば癌死を防げるのではないかとの考えから始めた、マウス腎癌肺転移モデルを用いた癌転移抑制の研究やヒト腎細胞癌細胞株樹立などの基礎研究、小径腎癌に対する、腹腔鏡下腎部分切除術における縫合法の変遷といった手術テクニック、前立腺集団検診への参加、性同一性障害クリニックの開設など、内容は多岐にわたり、非常にわかりやすくユーモアを交えてお話いただいた。手間をかけなければ簡単には良い結果が出ないという考えから、自ら車に機械を積み前立腺健診を回られ、様々な苦労をして15年間フォローしたというお話は、そのあまりに長い期間と得られた成果の大きさに、教室員一同驚きを隠せなかった。最後に、若者には限界が無く、何にでもチャレンジするべきであり、サポートするのが先輩であるとのメッセージをいただいた。学生時代に剣道とアイスホッケーに打ち込まれた先生のお話は力強く、心に響く大変すばらしい講演であった。

文責 松本一宏

ご参加頂きました先生方(順不同)

河村先生、松下先生、木下英親先生、村井先生、堀永先生、原先生、武田先生、早川先生、福本先生、勝井先生、加山先生、箱ア先生、楊井先生、案納先生、梅田先生、木下水葵先生、池田先生、大家、宮嶋、浅沼、菊地、篠島、水野、小坂、篠田、森田、松本、荻原、佐藤、丹羽、本郷、環、茂田、高松、寺西、村上、大村、荘所

以上38名出席

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第14回 平成28年1月16日(土)14:00-16:20

場所: 慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟1階ラウンジ

今年もVisiting Professorship 2016が開催された。若手研究者10名が、日ごろの成果を8分間に凝縮して発表を行い、続いて4分間の質疑応答におさまりきらない活発なDiscussionが交わされた。第6回目の今回は、Visiting Professorとして岡山大学医歯薬学総合研究科泌尿器病態学教授那須保友先生にお越しいただき、大変示唆に富んだコメント、ならびに研究へのアドバイスを頂いた。

Presentationの最優秀賞(1位)は「急性精巣上体炎重症化予測アルゴリズムの構築」を発表した本郷周先生、優秀賞(2位)は「PSA監視療法の患者選定におけるがん微小環境マーカーとしてのVasohibin-1発現の意義」を発表した小林裕章先生が選ばれた。さらに今回は通常の研究とは毛色が違う特別賞、那須賞が急遽新設され、「最も論文を産生している日本人泌尿器科医とは?泌尿器科医および施設の背景」を発表した丹羽直也先生が選ばれた。

その後、ホテルニューオータニのガーデンコートに場所を移して、信濃町Urology Forumが開催された。那須保友先生より「泌尿器科医の夢-大学発の研究を世界に-」と題した特別講演を頂いた。先生が大学での研究成果を実臨床に応用し産業化に繋げるため行ってきた様々な偉業、岡山大学病院が慶應義塾大学病院とともに2014年に臨床研究中核病院に指定されるに至った経緯、さらに今後研究成果を社会へ還元していくための実務的なヒントを沢山ご教授いただいた。一方で非常に興味深かったのは、現代科学の最先端を走っている先生が、逆に人生のモットーとして多くの古典を重要視していらっしゃる点であった。講演の中でも人生の様々な局面で生きる糧となりうる先人達の言葉を紹介していただき、多くの教室員が心を打たれた。先生は後進の指導においても人間力を育むことに非常に重きを置いており、教室員一同医師としてのあるべき姿を再確認させられたすばらしい講演であった。

文責 松本一宏

ご参加頂きました先生方(順不同)

河村先生、松下先生、村井先生、飯ヶ谷先生、中島洋介先生、朝倉先生、矢内原先生、堀永先生、堀口先生、原先生、西本先生、長谷川政徳先生、宮ア先生、松島先生、萩原先生、荻原先生、本郷先生、箱ア先生、加山先生、楊井先生、大家、宮嶋、菊地、篠島、水野、小坂、篠田、森田、松本、早川、小林、福本、佐藤、室、環、丹羽、茂田、案納、久冨木原、渡邉

以上40名出席

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第13回 平成27年1月17日(土)14:00-16:20

場所: 慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟1階ラウンジ

今年もVisiting Professorship Program 2015が開催された。今年も精鋭な若手研究者10名が、日ごろの成果を8分間に凝縮してpresentationを行い、続いて4分間の質疑応答で活発な議論が交わされた。第5回目の今回は、Visiting Professorとして香川大学医学部泌尿器・副腎・腎移植外科教授 筧善行先生にお越しいただき、大変有益なコメント、アドバイスを頂戴できた。

Presentationの最優秀賞(1位)は「Dutasteride内服・中断前後の一斉尿中ステロイド代謝産物の検証」を発表した前田高宏先生、優秀賞(2位)は「”Tumor Budding”、T1膀胱癌における新しい予後予測因子」について発表した福本桂資郎先生が選ばれた。

その後、ホテルニューオータニ:ガーデンコートに場所を移して、信濃町Urology Forumが開催された。筧善行先生より「泌尿器科学の門をたたいて33年、振り返ってみます」と題した特別講演を頂いた。研修医時代から、大学院、京都大学、そして現在の香川大学に至るまでの紆余曲折の泌尿器科医人生を、時に笑いを織り交ぜながらお話頂いた。そして、前立腺肥大/前立腺炎の研究、RCCにおけるP糖タンパクの役割など、先生がこれまでになされてきた偉勲の誕生秘話は、研究に対する姿勢と着想のヒントが沢山詰まっていた。また、前立腺癌に対するActive surveillanceの提唱、International Journal of Urologyの黎明期の苦労や、献腎ドナーを増やすための努力など、泌尿器科学界における先生の多大なる貢献に、大変感銘を受けた。先生の素晴らしく明朗快活な人柄がにじみ出る講演は、瞠目の連続で、実にあっという間の1時間だった。

文責 松本一宏

ご参加頂きました先生方(順不同)

尾関先生、河村先生、松下先生、田野口先生、松崎先生、原先生、西本先生、古平先生、城武先生、田中先生、前田先生、服部先生、矢澤先生、大門先生、室先生、環先生、茂田先生、大家、宮嶋、浅沼、菊地、篠島、水野、小坂、篠田、森田、松本、早川、小幡、石岡、江ア、福本、荻原、本郷、加山、箱ア、楊井、宮本

以上 38名出席

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第12回 平成26年1月25日(土)13:00-16:00

場所: 慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟1階ラウンジ、
ホテルニューオータニ:ガーデンコート

今回は特別プログラムとしてVisiting Professorship Program 2014が開催された。若手研究者10人より約15分間の発表が行われ、活発な質疑応答がなされた。

Visiting Professorとして鹿児島大学大学院医歯学総合研究科泌尿器科学教授 中川 昌之 先生にお越しいただき、大変示唆に富んだ質問やコメント、ならびに研究へのアドバイスを頂いた。

Best presentation賞として基礎部門では萩生田純先生の「ヒト精子無力症の新規原因遺伝子の同定」、臨床部門より早川望先生の「上部尿路腫瘍診断時における上部尿路細胞診採取の意義の検討」が選ばれた。

その後、ホテルニューオータニ:ガーデンコートに場所を移して、信濃町Urology Forumが開催された。中川 昌之 先生より「泌尿器癌克服に向けて」と題した特別講演を頂いた。

まず先生の泌尿器科癌に関する研究歴を踏まえ、その意義やその後の変遷について大変分かりやすく解説いただき先生の医師・研究者としての偉大さを垣間見ることができた。膀胱癌の治療成績の向上が他の癌に比較してあまり芳しくないことに危惧を感じ、早期発見の向上をテーマとし、教室として長年取り組んでこられたこと、中でも新規分子マーカ探索として、マイクロRNAに着目し、新規にmiRNA-145, 96などを発見されたことを独自の視点を踏まえ、大変分かりやすく解説いただいた。教室員は膀胱癌やmiRNAに対する新たな視点を学ぶことができた。

また、若手医師へのメッセージとして、(1)なるべくチャンスを見つけて外の世界をみて視野を広げること、(2)良い師を見つけること(運もあるが・・)(3)失敗を大事にすること、についてユーモアを交えてご講演いただき、教室員は中川先生の大変温かい眼差しを感じた。

膀胱癌の治療成績の改善し、患者に還元したいという中川教授の独自の視点に立った、深い洞察力から発せられる疑問、その解決に向けた研究に対する熱意、そして臨床試験の遂行にいたる一連の研究の成果を目の当たりにして、教室員は大変胸を打たれる講演であった。

文責 小坂威雄

ご参加頂きました先生方(順不同)

松下先生、河村先生、名出先生、村井先生、小川先生、尾関先生、原先生、武田先生、金子先生、宮崎先生、田中先生、前田先生、吉峰先生、伊藤先生、弓削先生、萩原先生、早川先生、高松先生 大家、中川、宮嶋、菊地、篠島、水野、香野、小坂、森田、安水、服部、矢澤、大門、小幡、石岡、小林、江崎、高橋、村上

以上 44名出席

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第11回 平成25年1月26日(土)13:00-16:00

場所:慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟1階ラウンジ

今回は特別プログラムとしてVisiting Professorship Program 2013が開催された。若手研究者10人より約15分間の発表が行われ、活発な質疑応答がなされた。

Visiting Professorとして群馬大学大学院医学研究科器官代謝制御学講座泌尿器科学病教授 鈴木 和浩 先生にお越しいただき、大変示唆に富むコメントや研究へのアドバイスを頂いた。

Best presentation賞として基礎部門では宮崎保匡先生の「上部尿路上皮癌における新規血管新生制御因子Vasohibin-1の発現の検討」、臨床部門より田中伸之先生の「膀胱内再発頻度は筋層非浸潤性膀胱癌の進展予測因子となり得るか」が選ばれた。

その後、信濃町Urology Forumが開催された。鈴木 和浩 先生より「前立腺癌に対するホルモン療法:新たな視点から」と題した特別講演を頂いた。まず、前立腺癌に対する治療の歴史的変遷と、近年日本においても登場が予想される新規治療薬の、開発の背景や使用方法に関して、独自の視点を踏まえ、大変分かりやすく解説いただいた。鈴木教授ら群馬大学の先生方が長年にわたり取り組んでこられた前立腺癌におけるアンドロゲン、特に、副腎性アンドロゲンの意義について、基礎研究や臨床データを踏まえた研究を解説いただいた。また、前立腺癌の内分泌療法におけるGnRH, LH, FSHの意義やその制御の重要性について近年改めて注目されるに至った背景を、ご自分の基礎実験データや臨床データに基づきご講演いただき、参加者は前立腺癌に対する新たな視点を学ぶことができた。鈴木教授の患者さん視点に立った、大変温かい眼差し、そしてその奥にある深い洞察力から発せられる疑問、その解決に向けた基礎的・臨床的研究に対する熱意に大変感動させられる講演であった。

文責 小坂威雄

ご参加頂きました先生方(順不同)

松下先生、河村先生、川村先生、村井先生、小川(由英)先生、尾関先生、長倉先生、橋本先生、松崎先生、原先生、長谷川先生、武田先生、田中先生、前田先生、宮崎先生、伊藤先生、早川(望)先生、江崎先生、増田(彩)先生、福本先生、佐藤(温子)先生、本郷先生、小林先生、高橋先生 大家、中川、宮嶋、菊地、水野、小坂、森田、金子、白川、安水、弓削、萩原、松島、服部、矢澤、大門、星野、茂田、高松、寺西

以上 44名出席

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第10回 平成24年2月4日(土)13:00-16:45

場所:慶應義塾大学医学部3号館北棟1階

今回は特別プログラムとしてVisiting Professorship Program 2012が開催された。若手研究者9人より約15分間の発表が行われ、活発な質疑応答がなされた。Visiting Professorとして横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器科病態学教授 窪田吉信先生にお越しいただき、貴重なコメント、研究へのアドバイスを頂いた。

Best presentation賞として基礎部門では城武卓先生の「前立腺癌におけるMCP-1の発現制御に関する検討」、臨床部門より矢澤聰先生の「急性細菌性前立腺炎における重症化予測アルゴリズムの作成」が選ばれた。

その後、信濃町Urology Forumが開催された。窪田吉信先生より「明日の泌尿器科学の進歩に向けて」と題した特別講演を頂いた。先生のグループによるVHL遺伝子の発見の経緯、腹腔鏡手術シュミレーターの開発、酸化チタンによる光触媒を用いたセルフクリーニングの研究など先生が泌尿器科の枠組みを超えた共同研究よりなしえた貴重な研究経験をお話し頂いた。ユニークな研究成果は壁をもうけず、異分野交流を大切にする先生のお考えが強く反映している。特に現在進行中の腹腔鏡手術シュミレーターの開発には、三菱プレシジョン株式会社、理化学研究所、横浜市立大学工学部とのコラボレーションで進められている。異分野交流で、研究に対する情熱、苦労を共有することで、意外な展開が開けてきたと自身の経験を楽しそうに語られた先生のお姿はとても印象的であった。最後にオリジナリテイのあることをやり続けること、めげないことが大切であると熱い若手へのメッセージを頂いた。

文責 菊地栄次

ご参加頂きました先生方(順不同)

家田先生、村井先生、安藤先生、大門先生、松崎先生、城武先生、宮崎先生、尾関先生、原先生、田村先生、福本先生、篠島先生、小幡先生、星野先生、中島(洋介)先生、朝倉先生、松本先生、寺西先生、小林先生、本郷先生、丸茂先生、萩生田先生、武田先生、小川(由英)先生、茂田先生、川村先生、福本先生、 大家、中川、萩原、宮嶋、菊地、増田、室、環、森田、小坂、松島、金子、前田、服部、篠田、田中、矢澤、丹羽、香野、鈴木、浅沼、弓削、佐藤

以上 50名出席

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第9回 平成23年12月17日(土)15:30-17:00

場所:臨床研究棟1階

演題1 小坂 威雄 先生 「尿路上皮癌におけるEMTとその機能解析」

小坂先生より尿路上皮癌における、上皮間葉転換(EMT)関連転写因子SNAILの発現と、その機能解析に関する研究成果が報告された。有用な予後予測するマーカーのほとんど知られていない上部尿路上皮癌(UTUC)において、EMT関連転写因子の発現解析や機能解析はなされていなかった。まず、尿路上皮癌において、EMT関連転写因子のタンパク質レベルで発現を検討したところ、有意であったのがSNAILであった。
200例近くのUTUCを対象として、SNAILの発現を免疫組織化学的に検討し、表在性UTUCに比較して、浸潤性UTUCでは有意な核内のSNAILの発現の上昇を認めたことが報告された。SNAILの発現は、high stage, high grade, 脈管浸潤(LVI)陽性症例において有意に高い傾向を認め、多変量解析において、SNAILの発現は、がん特異的生存率における独立した予後因子であることが明らかになった。細胞株における検討では、UMUC-3細胞は他の細胞株に比較して、SNAILの発現と浸潤能が高かった。
UMUC-3細胞において、SNAILの発現をsiRNA法にて特異的に抑制したところ、Vimentin, MMP2, MMP9の発現を有意に抑制した。その際に、有意にUMUC-3細胞の浸潤能を抑制し、SNAILの誘導するEMTがUTUCの進展に深く関与していることが明らかになった。SNAILはUTUCにおける有用な治療標的となりうることが示唆された。

本研究は当大学病理学教室との共同研究によって、EMTの主要な制御転写因子であるSNAILが尿路上皮がんにおいて、EMTを介した浸潤能を制御していること、SNAILの発現がUTUCの有用な予後マーカーであることを明らかにした研究成果で、本研究の詳細はKosaka T. et al, Clin Cancer Res 2010 ; 16(23):5814-23に掲載されている。今後はこれらのマーカーをどのように臨床の場に応用していくかが課題であろう。今後、UTUCの生命予後の改善に向けて、SNAILの発現制御機構に関する検討が期待される。

文責 菊地栄次

演題2 佐邊 壽孝 先生「GEP100-Arf6-AMAP1経路:変異p53とTGFb1に誘導される癌的EMT・悪性度進行の実行経路 」(慶應医学会例会)

佐邊先生からEMT実行経路してのGEP100-Arf6-AMAP1経路に関する御講演を頂いた。乳がん研究は、若年層からの罹患率と死亡率が高く、また、他の癌に比べてバイオインフォマテイクスが圧倒的に進んでいることから、がん研究の対象として、比較的取り組みやすいことをその特徴として挙げられ、先生自身が、特に乳癌に焦点を当ててEMTの研究を進めてこられたその歴史について、丁寧に解説がなされた。先生は、Arf6と呼ばれる低分子量G蛋白質、その下流エフェクター因子AMAP1 (DDEF1, ASAP1)が多くの浸潤性の高い乳癌で高発現し、浸潤と転移に関与していることを見出された。Arf6は主に形質膜成分や受容体のリサイクルを担っており、乳癌の浸潤転移においてArf6を活性化させるGEF(guanine nucleotide exchange factor)はGEP100/BRAG2であり、GEP100はEGFRシグナルの下流で作動することを明らかにされた。このEGFR-GEP100-Arf6-AMAP1経路が、E-カドヘリンやb1インテグリンの細胞表層への輸送に関与し、EMTを誘導する実行経路の一つとして、それらの詳細な分子機序を述べられた。また、TGF-βは、GEP100-Arf6-AMAP1経路を活性化することで、浸潤や転移に関与することを明らかにされ、p53の変異と協調して、EMTの実行経路であることを示された。癌とその微小環境との相互作用は癌の種類によって大きく異なるものの、実際、臨床的には、転移や原発巣に対する治療は未だ一辺倒であり、何故、このような差が生じるのかの理解が今後の癌研究に重要であることを教えられた。先生は、自身の膨大な研究成果のみならず、他の研究施設からの研究成果も、丁寧に引用しながら講演され、また質疑応答でも当教室員と活発な議論がなされ、すばらしい講演を拝聴することができた。

文責 小坂 威雄

ご参加頂きました先生方(順不同)

村井 勝先生 松下一男先生 小川由英先生 丸茂健先生 浅野友彦先生 井手広樹先生 松本一宏先生 武田利和先生 宮崎保匡先生 星野桂先生 福本桂資郎先生 荻原広一郎先生 本郷周先生

大家 宮嶋 浅沼 菊地 小坂 田中 前田 金子 鈴木 安水 弓削 服部 松島 萩原 矢澤 環 室 佐藤

以上 31名出席

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第8回 平成23年2月5日(土)13:00-16:15

場所:慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟1Fラウンジ

今回は特別プログラムとしてVisiting Professorship Program 2011が開催された。若手研究者11人より約10分間の発表が行われ、活発な質疑応答がなされた。Visiting Professorとして京都大学大学院医学研究科泌尿器科学教授 小川修先生にお越しいただき、貴重なコメント、研究へのアドバイスを頂いた。

Best presentation賞として基礎部門では篠田和伸先生の「移植医療におけるNF-kappaB制御の有効性の検討、臨床部門より西本紘嗣郎先生の「ヒト正常副腎皮質・腺腫の新たな組織像」が選ばれた。

その後、信濃町Urology Forumが開催された。小川修先生より「泌尿器科腫瘍学から学んだこと」と題した特別講演を頂いた。WT-1遺伝子に注目した遺伝子診断、ゲノムインプリンティング研究、そして癌予防研究という先生の今までの基礎研究の流れを分かりやすくお話し頂いた。先生が病理学教室で研究を始められたころ、実験室の立ち上げを一からご自身で行い、その際に剖検から学ぶことの大切さ、自ら努力して検体収集を行うことの重要性を学ばれたというエピソードはとても印象的なお話であった。1)転んでもただでは起きない、2)積極的に外の世界を見る、3)現状でできる最大限のことを行う、という先生の研究の基本姿勢は、とても参考になる貴重な提言であり、若い泌尿器科医にとって強い刺激を受けた講演となった。ユーモラスな一面を持ちながらも、とても熱く、また真摯な先生の研究姿勢が目に浮かぶ講演であった。

文責 菊地栄次

ご参加頂きました先生方(順不同)

名出先生、村井先生、松下先生、小川先生、田野口先生、飯ヶ谷先生、丸茂先生、長倉先生、北郷先生、原先生、松本一宏先生、金井先生、西本先生、田村先生、吉峰先生、城武先生、松島先生、服部先生、萩生田先生、武田先生、石田先生、森田先生、安藤先生、白川先生、早川望先生、矢澤先生、江崎先生

大家、中川、宮嶋、浅沼、菊地、水野、香野、篠田、長谷川、田中、前田、小坂、鈴木、宮崎、金子、伊藤、弓削、萩原、安水、小林、福本

以上 48名出席

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第7回 平成22年12月4日(土)15:30-17:00

場所:予防校舎講堂3階

演題1 田中伸之先生「The novel strategy for urogenital cancers through regulating the rennin-angiotensin system」

田中先生よりCDDPに高血圧治療薬であるARBを併用した新規膀胱癌治療療法の研究成果が報告された。CDDP投与によりARBの標的受容体であるAT1Rの発現の上昇がin vitro及びin vivoにおいて確認された。その作用機序としてはCDDP投与に伴うreactive oxygen species(ROS)の上昇の関与が示唆され、free radical scavengerにてCDDP投与後のROS上昇は抑制され、次いでCDDP投与後のAT1R上昇も有意に抑制された。注目すべきは、膀胱癌臨床検体における化学療法前後のAT1R発現変化を免疫組織学的に検討した結果である。TUR-BTで得られた検体を化学療法前の標本とし、またneoadjuvant化学療法後膀胱全摘除術が施行され得られた検体を化学療法後の標本として統一症例で比較検討している。化学療法後の標本ではTUR-BT標本と比較し有意にAT1Rの発現が上昇していた。これによりin vitroで認められた事象を組織において再確認したことになる。更にマウス皮下腫瘍モデルでのCDDP+ARB療法の抗腫瘍効果の検証が行われ、臨床利用可能なARB投与量でCDDPの腫瘍増殖抑制の増強が示されていた。なお本研究の詳細はTanaka N et al, Mol Cancer Ther 2010 ; 11:2982-92に掲載されている。今後さらに、本基礎研究データをもとにARBを用いた膀胱癌の臨床研究が開始される予定である。新規膀胱癌治療戦略確立を目指した本研究はトランスレーショナルリサーチとして今後注目すべきものであると感じられた。

演題2 Dr. Wun-Jae Kim「Genetic signature and epigenetic markers in bladder cancer」(慶應医学会例会)

Kim先生より、膀胱癌におけるgeneticおよびepigenetic marker探索の基礎研究成果が報告された。genetic signatureの解析ではマイクロアレイを用いた検討で筋層非浸潤性膀胱癌のprogressionに強く関連する8つのgeneが同定された。筋層浸潤癌では4つのgene (IL-1B, S100A8, S100A9, EGFR)が候補として同定され、これらの遺伝子の発現は予後との関連が強く認められた。次いで先生の今までのepigenetic markers探索の成果が示された。その中でRUNX3遺伝子のメチル化がもっとも有力な膀胱癌バイオマーカーの候補であり、尿中バイオマーカーとしても有用である可能性が高いと結論された。近年尿中剥離細胞のメチル化異常の検出による癌の存在診断に期待がもたれている。これらはlow grade腫瘍の癌検出能(感度)が低いとされている尿細胞診の診断能を補う可能性が高い。

膀胱癌において新規の尿中バイオマーカーが実臨床でルチーンに使用されるためには、高い感度・特異度を持ち合わせ、癌の存在を正確に診断できることが求められる。さらに再発、病期進展等の予後予測にも役立つと思われ、個別化診断・治療への応用が期待される。RUNX3遺伝子を含めた遺伝子のメチル化検出は、今後臨床応用が期待される新たな膀胱癌診断法の一つになりうるのではと感じられた。膨大な研究成果を基にしてKim先生は講演を進められた。その内容は実に説得力のあるものであり、基礎研究への熱意、姿勢がひしひしと伝わってきたすばらしい講演であった。

 

文責 菊地栄次

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第6回 平成22年4月3日(土)15:30-17:00

場所:講堂1 (新教育研究棟2階)

演題1 西本紘嗣郎先生「Revolution in adrenocortical pathology
−a novel strategy for detection of aldosterone-producing cells−」

西本先生よりまず、ヒト正常・病態における副腎皮質の組織構築と機能分化に関する基礎研究成果について報告された。今回、人における新たなアルドステロン(Aldo)合成酵素(CYP11B2)と11betaOH化酵素(CYP11B1)の抗体を用いて、正常、原発性アルドステロン症、Cushing症候群などにおけるこれらの酵素分布が検討された。西本先生らのグループはこの研究で1) ヒト副腎皮質には従来の層状機能分化に加え、斑状機能分化が存在すること、2) ヒト正常副腎皮質には被膜下にCYP11B2を高発現する細胞クラスター;Aldosterone-producing cell cluster, APCCが高頻度に存在し、Aldo合成は球状層において誘導的、APCCにおいて構成的であること、3)CYP11B2と-B1の免疫組織化学法は、副腎腺腫の病理学的確定診断法として有用であることを証明している。さらに臨床面では、原発性アルドステロン症のガイドラインを提示した上で、従来の静脈サンプリングの問題点、超選択的静脈サンプリングの有用性、早期あるいは、両側原発性アルドステロン症の治療への工夫について言及した。微小な各ホルモン過剰産生腫瘍の組織学的検出、その局在の把握は今後の副腎腫瘍の臨床面の新たな進歩であると感じられた。なお本研究の基礎的内容の詳細はNishimoto K et al., J Clin Endocrinol Metab, 2010 [Epub ahead of print] に掲載されている。

演題2 Dr. Muriel Mathonnet「Adrenal pathologies from the patient to the researcher」(慶應医学会例会)

Mathonnet先生より、先生が蓄積された腹腔鏡下副腎摘除術のデータの詳細、腹腔鏡下副腎摘除術式のテクニックについてまず御講演いただいた。さらに現在当教室でも精力的に行っているsingle portを用いた腹腔鏡下手術についてビデオを用いた解説がなされた。ポートは臍外側に置かれており、当教室で行われている臍を用いたポート位置ではないが、操作性が容易である点からその部位でのポート作成が選択されているという。次いで1)When should we perform surgery for adrenal incidentaloma? 2) What cases do we have the limitation for laparoscopic surgery for adrenal tumor? 3)When should we change laparoscopic surgery to open surgery?の3つの重要な課題について詳細な概説がなされた。最後に副腎皮質癌を中心としたcarcinogenesisの解明に対する先生のグループの基礎的研究の努力の一部を話いただいた。副腎腫瘍の臨床、手術手技は現在確立しつつあるものの、まだまだ改善の余地が残されている。基礎的分野は腫瘍化へのプロセス、carcinogenesisの解明へ向けた研究が推進される必要がある。今回、技術面・臨床面での両教室のスマートな討論が展開され、とても印象的な講演であった。

文責 菊地栄次

ご参加頂きました先生方(順不同)

名出先生、川村先生、松下先生、河村先生、尾関先生、家田先生、丸茂先生、長倉先生、石川先生、朝倉先生、内田先生、堀永先生、原先生、松本一宏先生、西本先生、田村先生、吉峰先生、井手先生、古内先生、武田先生、白川先生、早川望先生、三上先生

大家、宮嶋、浅沼、長田、菊地、水野、香野、篠田、田中、前田、小坂、石田、石橋、金子、伊藤祐、弓削、萩原、安水、小林、江崎、阿南、平澤

以上 45名出席

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第5回 平成21年11月28日(土)15:00-17:00

場所:講堂2 (新教育研究棟3階)

演題1 松本一宏先生「リポソーム法を用いたIL-15遺伝子導入による膀胱癌治療」 

松本先生よりIL-15遺伝子導入による膀胱癌治療について報告がなされた。内容は以下の通りである。マウス膀胱癌細胞株MBT-2にIL-15遺伝子をliposome法で導入したところ、上清を用いたELISAにてIL-15分泌量の増加が確認された。マウス膀胱癌同所性モデルでIn situでの膀胱内への遺伝子導入を行い、IL-15遺伝子導入により有意に腫瘍増殖抑制効果を認めた。IL-15治療群の腫瘍周囲には多くのCD8陽性細胞の浸潤を認めた。治療群に対し再度皮下腫瘍を作成したところ、こちらでも腫瘍増殖抑制効果が認められた。今後、この抗腫瘍効果のメカニズムの詳細を明らかにさせていくことが期待された。

演題2 小坂威雄先生「レニンーアンギオテンシン系と前立腺癌」

小坂先生より前立腺癌におけるレニンーアンギオテンシン系について報告がなされた。内容は以下の通りである。去勢抵抗性不前立腺がん(CRPC)において、AT1Rの発現が、ホルモン感受性前立腺癌に比較して有意に亢進しており、またARBの投与により、抗血管新生作用を介した抗腫瘍効果が見られた (KosakaT. et al. Prostate 2007)。C4-2をアンドロゲン除去血清下に6か月間培養することで、新たなCRPC細胞株であるC4-2AT6を樹立した(KosakaT. et al. Prostate 2009)。C4-2AT6では、有意にVEGFやAT1R、血管新生因子の発現調節に関与する転写因子であるEts-1とHIF-1αの発現の亢進を認めた。C4-2AT6はCRPCの進展モデルとして、in vitro, in vivoにおいて、非常に有用な実験モデルを提供するものと考えられ、今後、微小環境に着目した研究を発展させていくことが期待された。

演題3 馬場志郎先生「ハイリスク前立腺癌に対するネオアジュバント遺伝子治療の検討(慶應医学会例会)」

馬場先生より、北里大学にて進行中の前立腺癌に対する遺伝子治療に関して御講演いただいた。ヘルペスウイルスに特有のチミジンキナーゼ遺伝子をアデノウイルス5型にRSVプロモーターとともに組み込んで前立腺組織内に注入し、プロドラッグであるガンシクロビルを投与することでDNA合成阻害を起こすという作用機序から始まり、ベイラーでのネオアジュバンドとしての遺伝子治療プロトコールとの相違点、現在までの3例の症例の治療成績などを分かりやすく説明いただいた。先生はこの講演の中で、遺伝子治療の申請から審査、承認までの経緯に関してもお話された。膨大な時間を申請書類の修正に費やし、数多くのヒアリングを重ね、最終的に厚労省厚生科学審議会から承認を得るまでに3年半もの月日を費やしたなど、この研究に対する先生の熱い思いが伝わってきた。新たな前立腺癌治療の可能性を感じさせる講演であった。

文責 水野隆一

ご参加頂きました先生方(順不同)

馬場先生、名出先生、橋本先生、川村先生、河村先生、尾関先生、家田先生、中村先生、小川先生、長倉先生、石川先生、浅野先生、大東先生、松崎先生、堀永先生、原先生、松本一宏先生、西本先生、田村先生、松島先生、弓削先生、森田先生、篠田先生、安藤先生、萩生田先生、安水先生、吉峰先生、井手先生

大家、中川、宮嶋、浅沼、水野、香野、武田、長谷川、城武、田中、前田、小坂、石田、石橋、金子、白川、大門、小幡、鈴木

以上 47名出席

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第4回 平成21年4月4日(土)15:00-17:00

場所:講堂1 (新教育研究棟2階)

演題1 武田利和先生「BCG膀胱内注入療法の完遂と再発予防効果との関連」 

武田先生より筋層非浸潤膀胱腫瘍に対するBCG膀胱内注入療法においての副作用の発現・治療の中断と治療効果の関連の検討結果が報告された。膀胱腫瘍に対し、TUR-BT施行後に初回BCG療法を施行した145人を対象にしたもので、その内、副作用を認め治療を中断したのは19人(13.1%)。再発に関してはBCG治療の中断(p=0.025)が、多発腫瘍(p=0.038)と同様に独立した再発予測因子であった。一方副作用の発現の有無自体は再発の予測因子ではなかった。今後、BCG療法の完遂率を高める手法を工夫し、効率を高めることが再発予防に寄与するか否かの検討に期待がもたれる。なお本研究内容の詳細はTakeda T et al. Urology, 2009 [Epub ahead of print]に掲載されている。

演題2 松本一宏先生 「造影超音波検査による前立腺癌病変の描出能」

松本先生より前立腺癌の検出正診率向上を目的とした、第2世代超音波造影剤(ソナゾイド®)の前立腺癌病変の描出能の結果が報告された。前立腺全摘術を施行された40人を対象とし、前立腺検体の病理組織検査で、癌病変が確認された計83箇の病変の検出率が検討されている。通常の経直腸的超音波検査にソナゾイド®による造影超音波検査を追加することにより36箇所(43.4%)の癌病変を同定、偽陽性は8箇所に認めた。またソナゾイド®投与に伴う副作用は認めなかった。造影超音波検査による前立腺癌病変の描出能は臨床上期待できるものであり、今後は腫瘍存在部位を明確にした標的生検の実現を志すという。PSAが10ng/ml以上で通常の針生検で陰性であるものや再生検に臨床応用が期待できると感じられた。

演題3 出口修宏先生「医療保険の現状 (慶應医学会例会)」

出口先生より保険請求・審査の仕組み、健康保険関連委員会、具体的な保険関連要望事項の立案までの過程、詳記の書き方のコツに関して御講演いただいた。日本泌尿器科学会からの要望事項で最近承認されたものとして、内視鏡下小切開手術、尿失禁パッドテストなどが挙げられた。また先進医療と高度医療の違いを分かりやすく説明いただき、高度医療は薬事法上の承認を受けていない医療技術に対するもので、手術支援ロボットがその一例である。先生はその独特のユーモラスな講演の中で、しかし力強く泌尿器科を取り巻く保険診療の矛盾に関してお話された。実際の泌尿器科医療の質と保険点数の乖離ははなはだしく、泌尿器科の努力が真に反映されていない現状を打開したいとの先生の願いが伝わってきた。今後、われわれひとりひとりの泌尿器科医がその矛盾を再認識し、その是正に努力すべきであると強く感じられた講演であった。

文責 菊地栄次

ご参加頂きました先生方(順不同)

出口先生、名出先生、橋本先生、川村先生、松下先生、家田先生、中村先生、小川先生、長倉先生、丸茂先生、石井先生、田野口先生、朝倉先生、頼母木先生、堀永先生、原先生、松本先生、西本先生、内田先生、田村先生、松島先生、古平先生、明瀬先生、弓削先生、森田先生、篠田先生、城武先生、安藤先生、萩生田先生、金井先生、田中先生

大家、中川、宮嶋、長田、菊地、篠島、香野、武田、長谷川、古内、吉峰、前田、小坂、石田、石橋、伊藤、金子、白川、宮崎、大門、星野、小幡、鈴木

以上 54名出席

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第3回 平成20年9月27日(土)15:00-17:00

場所:講堂1 (新教育研究棟2階)

演題1 鈴木絵里子先生 「NF-κB阻害剤(-)DHMEQによるマクロファージ活性抑制機構の解析」 

鈴木先生よりDHMEQを用いたマクロファージにおける詳細なNF-κB抑制機序解明と、その貪食能に対する影響が報告された。RAW264.7細胞を用いて、LPS刺激下においてDHMEQを投与することで、NF-κB活性能の抑制が確認された(EMSA)。iNOSの発現に関しては、DHMEQによりNO合成の抑制が確認された。また各種サイトカイン(IL-6、IL-12、TGF-betaなど)の産生低下、COX-2の発現の低下も検討されていた。マクロファージにおけるDHMEQの効果で特記すべきことは、NF-κBを抑制することで、機能的にはその貪食能が抑制されることである。鈴木先生は初代培養マクロファージにおいても同様の結果を確認している。再現性の高い鈴木先生の研究により、DHMEQの免疫抑制剤としての臨床応用の可能性が開けたと言える。

演題2 篠田和伸先生 「DHMEQによるヒト末梢血由来樹状細胞の成熟抑制効果の検討」

篠田先生よりDHMEQを用いた樹状細胞(DC)の成熟の抑制効果の検討が報告された。未熟DCにおいてLPS刺激でNF-κBは活性化されるが、DHMEQ前処理はこれを抑制した。さらにCD40, CD80, CD86, HLA-DRの発現、サイトカイン(IL6, TNF-α, IL-12)の産生は有意に抑制された。一方、IL-10の産生は比較的保たれていた。Allogeneic T cellとDCを混合培養し、T細胞増殖能を調べた実験ではDHMEQ処理後にLPS添加したDC(dl-DC)ではT細胞活性化能が低く、Th1細胞の誘導も低かった。Tregの誘導率の検討も行われ、成熟、未熟、dl-DCそれぞれはIL-10濃度に相関する結果であった。DCの成熟過程において、NF-κBの活性化が起こり、免疫過剰過程が加速する。その抑制は移植臓器の正着に寄与するだろう。DHMEQは、新規免疫抑制剤として期待が持たれることが本研究で明らかとなりつつある。

演題3 星長清隆先生 「藤田保健衛生大学における献腎移植 (慶應医学会例会)」

星長先生より本邦での献腎移植の現状、また藤田保健衛生大学での心肺停止症例における献腎移植の成績に関して御口演いただいた。欧米では、慢性拒絶反応の第一治療選択は腎移植であり、透析はそれまでの架け橋という位置づけとなっている。一方、本邦では透析患者数は年々増加しているが、このうち、献腎登録がされているのは、5%未満であり、その増加傾向を認めていない。実際に献腎移植されたのは登録患者の1.6%にすぎない現状である。先生は献腎移植増加のために我々泌尿器科医が中心となり、他科との連携をさらに深める必要性を力説された。心肺停止症例における献腎移植の成績が生体腎移植のそれと変わらないというある意味ショッキングなデータをいち早く、世界に発表し、新たな腎移植の常識を作り変えた先生あるいは先生の施設の緻密な臨床データを拝見し、先生の献腎移植例を増やし患者さんの生活の質を向上させたいという強い熱意がひしひしと伝わってきた口演であった。

文責 菊地栄次

ご参加頂きました先生方(順不同)

星長先生、名出先生、橋本先生、松下先生、相川先生、浅野先生、朝倉先生、増田先生、田野口先生、原先生、内田先生、篠田先生、鈴木絵里子先生、武田先生、萩生田先生、明瀬先生、古内先生、白川先生、伊藤先生、宮崎先生、安水先生

大家、宮嶋、菊地、松本、森田、小坂、長谷川、田村、山崎、城武、田中、吉峰、前田、矢沢

以上 35名出席

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第2回 平成20年3月22日(土)15:00-17:00

場所:講堂2 (新教育研究棟3階)

演題1 小堺紀英先生 「新規NF-κB活性阻害剤(DHMEQ)を用いた前立腺癌に対する放射線感受性増強の検討」

小堺先生よりin vitroにおける前立腺がん細胞株を用いた放射線照射とDHMEQとの併用による殺細胞効果の検討結果が報告された。内容は以下のとおりである。放射線照射によりLNCaP、PC-3細胞においてNF-κB活性能は上昇した。DHMEQを放射線照射前に用いることにより、放射線照射により活性化されたNF-κBは抑制され結果、前立腺がん細胞における殺細胞効果は増強された。またcell cycle解析によるG2M arrestが確認された。放射線容量、DHMEQ投与量、投与時間の設定の最適化を図り、再現性のある結果を導いていた点に努力の跡が伺える報告であった。今後の課題としては、NF-κBに制御をうけるcell cycle関連蛋白の詳細な検討、および動物実験を介したin vivo研究が進められる予定。

演題2 金尾健人先生 「腎癌における分子標的としてのヒストンアセチル化の意義」

近年注目されているエピジェネティクスの中からヒストンのアセチル化が腎癌の分子標的になり得るかについての検討がなされた。免疫組織染色によって、腎癌では多くの症例においてヒストンの脱アセチル化が起きていることが示され、さらにその脱アセチル化は腎癌の進行や核異型度に関連することが示された。また腎癌細胞株に対するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の効果も検討された。脱アセチル化酵素阻害剤は腎癌細胞株に抗腫瘍効果をもち、ヒストンのアセチル化を誘導すると共にp21やBcl-2のリン酸化を誘導することが示された。これらの知見から、ヒストンのアセチル化が腎癌の分子標的になり得る可能性が示唆された。

演題3 小川由英先生 「シュウ酸からオキサローシスまでの30年の歩み(慶應医学会例会)」

小川先生よりシュウ酸とその結石形成に関する、自身の基礎的研究成果を中心とした概説がなされた。血中シュウ酸の測定に高い感度を示す化学発光HPLC測定の利用、シュウ酸カルシウム結石形成のメカニズム、ラット結石発症モデルの作成などに関して詳細な概説がされた。またhyperoxaluria syndromeに関してはご自身の研究成果をまじえ、丁寧な解説をしていただいた。シュウ酸の経口摂取に関するカルシウム摂取の役割、oxalate precursorとしてのhydroxyproline、glycolate/glyoxylate, xylitolなどの外因性のhyperoxaluria関連前駆物質の重要性、vitamin B6のglyoxylate解毒作用への役割、type 1, 2に分類されるhyperoxaluriaの臨床などの講義が系統的に行われた。先生の講演を拝聴し、より詳細なシュウ酸カルシウム結石の基礎、臨床がわかりやすく理解できたのみならず、先生ご自身の膨大な基礎研究のデータの集積の軌跡を拝聴したことで、基礎的研究の統合的な集積の重要性をあらためて痛感した。

文責 菊地栄次

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第1回 平成19年9月8日(土)15:00-17:00

場所:予防校舎講堂 3階

演題1 金井邦光先生 「膀胱癌細胞に対するVitamine E succinateおよびPaclitaxelによる抗腫瘍効果」

金井先生よりin vitroにおける膀胱癌細胞株を用いた抗腫瘍効果の検討結果が報告された。内容は以下のとおりである。Vitamine E succinate (VES)、Paclitaxel単独治療での濃度依存性殺細胞効果、両治療を併用することによる細胞障害の相乗効果、apoptosisへの影響、フローサイトメトリを用いたcell cycle解析によるS期減少、G1arrestの確認。現在、動物実験を開始するも、VESの溶媒自体の細胞毒性が問題であったとし、溶媒の副作用頻度の検討が詳細に行われた。最適な溶媒の濃度設定にはかなりの時間を要したという。金井先生の努力の跡が伺える報告であった。今後の課題としてはVESとPaclitaxel併用治療における効果発現の機序の解明。動物実験を介したin vivo研究が進められる予定。

演題2 大家基嗣先生 「泌尿器科学における基礎と臨床の相方向的一体型研究について」

大家先生より今後の泌尿器科領域における基礎と臨床のあり方について自身の見解を中心に発表がなされた。具体的には臨床と基礎の融合、境界領域疾患への研究の充実、低侵襲治療と機能温存の展開、大規模な臨床研究の推進。モデル動物の作成、逆トランスレーショナルリサーチの概念など基礎研究の充実を慶應泌尿器科学教室として今後さらに発展させることを力説された。

演題3 勝岡洋治先生 「前立腺癌診療におけるPSAの役割(慶應医学会例会)」

勝岡先生よりPSAを取り巻く基礎、臨床の詳細な概説がなされた。PSAの基礎事項(分子形態、PSAの歴史、proPSA、BPSA)、アッセイ法の問題点、スクリーニング、あるいは泌尿器科臨床におけるPSAのマーカーとしての有用性、PSAの病理病期予測への活用などが詳細に概説された。最後に先生自身が現状と展望(問題点)を話された。PSAやPSA based-parameterのcut-off値をどのように設定するべきか。High risk患者の選別にPSAがどのような役割を果たすか、また現在一番の問題点はPSA検診の重要性が政府で軽視されている点であるという。我々泌尿器科医の責務として、PSA検診の重要性を広く強調すべきであると話された。先生の講演を拝聴し、今後PSAを用いて臨床に当たる上でその限界を十分に理解し、同時にさらなる最適な前立腺癌マーカーの探索が重要であると考えられた。

文責 菊地栄次

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