臨床研修募集

卒後研修システムについて

当教室の研修システムには伝統的な特徴があります。それは30年来、米国のレジデントシステムを取り入れてきたことです。3年目から泌尿器科専修医として研修を開始しますが、レジデント制によって教育の機会均等が実現できています。専修医1年目(卒後3年目)は慶應大学病院で研修し、2年目と3年目では関連病院に出向します。指導医の下で、数多くの手術を術者として執刀の機会を得るだけでなく、外来を担当し、泌尿器科医としての基礎をつくりあげます。4年目で慶應大学病院に帰室し、臨床での研鑽を積み、泌尿器科専門医を取得します。日々の臨床に携わる傍ら、専門性を重視した基礎研究あるいは臨床研究を行い、専門学会で発表する機会を得ます。スタッフは懇切丁寧に学会発表と英文での論文作成指導を行います。5年目は慶應大学病院でチーフレジデントとして、病棟の運営、手術の中心的役割を担い、カンファレンスの司会を行います。

慶應病院では血液浄化・透析センターへのローテートもあり、血液浄化療法、腹膜透析、さらには腎臓移植にも携わります。透析医学会、腎臓学会の専門医の取得も視野に入れます。教室の特徴から、悪性疾患の患者数が良性疾患の患者数よりも多い傾向があります。がん専門医も多くの医師が取得しています。良性疾患では腎不全、移植のみならず、副腎腫瘍、神経因性膀胱、結石症、ED等も専門性を重視しながら研修します。冒頭の挨拶でも述べましたが、2009年10月からは浅沼宏講師を中心に小児泌尿器チームが発足しました。先天性水腎症、尿道下裂、膀胱尿管逆流症、停留精巣、ウイルムス腫瘍など幅広い小児疾患に対しても教育を行っています。

チーフレジデント終了時には泌尿器科医としての実力が備わっていることを我々スタッフは実感いたします。数多くの臨床経験と大学病院での臨床を中心になってコーディネートした自信がその後の医師としての人生に反映されていると感じています。慶應大学泌尿器科が内外に誇ることのできるシステムと自負しています。

診療、研究、教育をバランスよく発展させるためには奥行きのあるビジョンを持って地道にかつ着実に推進していくことが重要だと考えています。当教室は、幅広い泌尿器疾患を網羅し、有機的な連携によって、高い質を担保すべく、新しい泌尿器科学の体系を提唱しています。「1+3」構造と呼んでいます(図1)。ともすれば、泌尿器科科学は雑多で、関連の少ない学問分野が集合しているようにも見えます。まず、悪性疾患と良性疾患に大きく分け、「1+3構造」の1を悪性疾患に充てます。良性疾患は多岐にわたりますが、専門性を重視し、3つの領域に集約させます。領域Iは腎臓・透析医学とし、腎移植も含みます。領域IIは内分泌代謝学と神経泌尿器科学とし、副腎疾患や神経因性膀胱、排尿機能障害等を含みます。領域IIIは生殖医学、アンドロロジー、性機能とします。悪性疾患はa) 腎癌、b) 膀胱癌、c) 前立腺癌、d) 精巣腫瘍の4分野で構成します。癌診療の質を上げるのは、良性疾患診療における手法が貢献すると考えています。たとえば、早期前立腺癌に対しての外科的切除後の合併症である尿失禁と勃起障害(ED)に対する対応です。尿失禁は領域IIでの手法で対処します。EDは領域IIIでの知見が寄与します。このように、領域間で有機的な連携をとり、質の高い医療を提供していきます。「1+3構造」は臨床的な体系に留まらず、これを基盤に基礎研究も平行して推進していきます。この「1+3構造」は現在医学部で推進されつつあるクラスター構想と連動していることにも特徴があります。小児泌尿器学においても「1+3構造」をあてはめることができます(図2)。小児においては、生殖医学は成立しないので、先天異常を領域IIIとして設定しています。


図1



図2


卒後研修の中には、研究も含まれます。医学博士の取得をめざし、研鑽を積む訳です。ご存知のとおり、現在における研究は分子生物学あるいは生化学的手法なくしては研究の質が担保できません。当教室では特に泌尿器がんにおける分子・細胞生物学的解析にかけては世界をリードしています。病理学的解析あるいはモデル動物に関しても秀でており、アットホームな雰囲気の中で教室員が協力しながら切磋琢磨しています。成果は若いうちから国際学会で発表してもらっています。

学位取得後は留学の道が開けてきます。当教室はこれまで、米国、独国、英国に留学者を多数輩出してきました。日頃より語学、特に英語が堪能でなければなりません。当教室ではすでに30年来、教室が負担して、ネイティブスピーカーを病院に招いて週1回、専修医を対象に英会話教室を開催しています。

確かに卒後教育は卒後臨床研修必修化制度により大きく変化しました。新しい研修制度を終了した専修医はこれまでの専修医と比較して、より広汎な医学の知識と実技が身についており、好ましい方向性であると考えています。泌尿器科を専修医として選択することは、これまで身につけた技量に加えてさらに高度な専門性を有する泌尿器科の知識と手術手技を身につけなければなりません。治療の低侵襲化としての腹腔鏡手術や、腎癌の分子標的治療は、最近の泌尿器科の動向として最も目立ったものですが、この流れに遅れることなく、若い専修医を教育していくにはスタッフの高い能力だけでなく、教育手法に工夫が必要と考えています。腹腔鏡手術は、従来の開放手術とは異なる視野に慣れ、独特の基本的手技を習得しなければなりません。その教育には開放手術以上に、段階的かつ構造的なカリキュラムの導入が必要です。当教室のレジデントルームにはいつでも使用可能なドライボックスが設置してあります。毎週月曜日には専修医が集まって練習しています。泌尿器腹腔鏡技術認定の取得をめざします。また、分子標的治療に代表される新たな治療法を専門医として行うためには、その理論的根拠を理解しなければなりません。ところが、そのためには、癌研究の基礎的な概念であるオンコジーンや腫瘍抑制遺伝子、ジェネティック、エピジェネティックな変化などを理解し、さらに分子生物学、生化学的な知識に加え、生命科学を俯瞰できるような知識が必要です。勉強会を行い、時には個別に指導し、生命科学全体に興味を持っていただき、全体としてのレベルアップを目指しています。

我々が目指す教育はまず、一人前の泌尿器科医を育てることですが、さらに専門領域を持ち、学会を担うオピニオンリーダーとなるべき人材の育成を目指しています。そのためには若いうちから、基礎・臨床研究を行い、国際性にめざめ、ライフワークを設定していくことが必要です。教育とはすぐに結果がでるものではありませんが、当教室が最も重視していることです。先輩医師の仲間に対する愛情が教育を支えています。地道に土地を耕し、種を撒き、肥料に工夫しながら、しっかり花が咲くよう努力していくのは、教授をはじめスタッフの任務です。

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