業績紹介

論文紹介

慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.37

Relationship Between Increased Expression of the Axl/Gas6 Signal Cascade and Prognosis of Patients with Upper Tract Urothelial Carcinoma.

Hattori S, Kikuchi E, Kosaka T, Miyazaki Y, Tanaka N, Miyajima A, Mikami S, Oya M.

Annals of Surgical Oncology

目的

AxlはレセプターチロシンキナーゼのTAM familyの一つで、Gas6はそのリガンドである。本検討ではUTUCにおけるAxl、そしてGas6蛋白の発現と予後との関連について明らかにすることを目的とした。

患者・方法

当施設で1983年1月から2007年12月までにUTUCに対して腎尿管全摘除術・膀胱部分切除術が施行された症例の内161症例を本研究の対象とした。摘出検体を用いて免疫組織学的染色を行い、Axl及びGas6の蛋白発現を確認した。

結果

平均観察期間は66.1 (6-120) ヶ月。Axlは67症例(42%)で強陽性、Gas6は72症例(45%)で強陽性であった。Axl強発現群は有意にGas6を強発現していた。多変量解析において、病理学的T因子(pT≥2、odds ratio(OR)=5.1, p=0.009)、Gas6強発現(p=0.038、OR=2.15)、Axl強発現(p=0.016、OR=3.32)が独立した癌特異的生存を予測する因子であった。これらの3因子を用いてUTUCの癌特異的生存を予測するリスク分類を行った。サブグループ解析では、pT2以下の症例(N=53)においてAxl/Gas6の強発現は癌特異的生存に影響しなかったのに対し、pT2以上の症例(N=108)ではAxl/Gas6の強発現はそれぞれ癌特異的生存を予測する因子であった。

結論

Axl及びそのリガンドであるGas6の発現はお互いに強く関連し、共にUTUCの術後の癌特異的生存を独立して規定する因子であった。

文責 服部 盛也

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Comparison of continence outcomes of early catheter removal on postoperative day 2 and 4 after laparoscopic radical prostatectomy: a randomized controlled trial.

Masashi Matsushima, Akira Miyajima, Seiya Hattori, Toshikazu Takeda, Ryuichi Mizuno, Eiji Kikuchi, and Mototsugu Oya

BMC Urol. 2015 Jul 31;15:77. doi: 10.1186/s12894-015-0065-y

目的

限局性前立腺癌に対する、腹腔鏡下前立腺全摘術後の尿道カテーテル抜去のタイミングは施設毎に異なり、最適なタイミングは確立されていない。尿道カテーテル留置中は違和感や痛みなどの苦痛を訴える患者は少なくなく、可能であればできるたけ早期に抜去した方がよいと考えられる。今回我々は、腹腔鏡下前立腺全摘術の術後の患者を対象とし、尿道カテーテル抜去時期を術後2日目と4日目の2つの群に分け、より最適な抜去タイミングをprospectiveに検証することを目的とした。

方法

当院で限局性前立腺癌に対して腹腔鏡下前立腺全摘術を施行した113例を対象とし、尿道カテーテル抜去時を2日目と4日目の2群に分け前向き無作為化試験により検証した。膀胱尿道吻合はV-Locを用い連続縫合で行い、尿禁制の定義は0 pad/日とした。

結果

術後2日目抜去群(n=57)と術後4日目抜去群(n=56)の両群において、年齢、治療前PSA値、前立腺容積、臨床病期、Gleason score、神経温存の有無、手術時間、気腹時間に有意差を認めなかった。急性尿閉の発症率は術後2日目抜去群が22.8%(n=13)、術後4日目抜去群が14.3%(n=8)であった(p=0.244)。術後3、6、9、12ヶ月後の尿禁制率は、術後2日目抜去群では21.8(12/55)%、41.1(23/56)%、58.0(29/50)%、71.4(35/49)%、術後4日目抜去群では34.5(19/55)%、66.0(35/53)%、79.2(38/48)%、83.7(41/49)%(p=0.138、0.009、0.024、0.146)と6、9ヶ月後において術後2日目抜去群で有意に尿禁制率が低かった。急性尿閉を来した症例(n=21)では、3、6、9、12ヶ月後の尿禁制率が術後2日目抜去群では0(0/13)%、23.1(3/13)%、38.5(5/13)%、54.5(6/11)%、術後4日目抜去群では37.5(3/8)%、75.0(6/8)%、87.5(7/8)%、87.5(7/8)%(p=0.017、0.020、0.027、0.127)と3、6、9ヶ月後において術後2日目抜去群で有意に尿禁制率が低い結果であった。多変量解析では術後2日目抜去後の尿閉の発生が尿禁制率低下の独立した危険因子であった(p=0.030)。

結論

術後2日目抜去群は術後4日目抜去群と比較して、急性尿閉症例において尿禁制率が有意に低く、尿道カテーテル抜去時期は術後2日目より4日目の方が望ましいことが示された。

文責 松島 将史

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Nicotine Induces Tumor Growth and Chemoresistance through Activation of the PI3K/Akt/mTOR Pathway in Bladder Cancer.

Yuge K, Kikuchi E, Hagiwara M, Yasumizu Y, Tanaka N, Kosaka T, Miyajima A, Oya M

Mol Cancer Ther. 2015 Sep;14(9):2112-20. doi: 10.1158/1535-7163.MCT-15-0140. Epub 2015 Jul 16.

目的

喫煙の継続は尿路上皮癌の発生リスク因子だけではなく、再発・進展さらには抗癌剤耐性の獲得との関連が注目されているが、メカニズムは解明されていない。我々はニコチンに着目し、ニコチンが腫瘍にどのように腫瘍増殖や抗癌剤耐性に影響を与えるのか調査した。

方法

膀胱癌細胞株T24を用いてニコチン・シスプラチン(CDDP)・PI3K/mTOR阻害薬(NVP-BEZ235)による、PI3K/Akt/mTOR経路への影響と細胞増殖・抑制効果をIn vitro実験系にて調査した。またIn vivo実験系にてマウス皮下腫瘍モデルにおけるニコチン、CDDP、NVP-BEZ235の影響と効果を確認した。

結果

T24細胞に対しニコチンを曝露させた所、細胞のviabilityが有意に上昇し(143±11%)、CDDPやNVP-BEZ235を同時に投与しても同様の結果が得られた。また、ニコチン曝露におけるpAkt・pS6の活性上昇を認め、CDDP同時投与によりその活性上昇はさらに上昇を認めた。一方、NVP-BEZ235投与はニコチン及びCDDPにてさらに活性上昇したpAkt・pS6を有意に抑制することができた。
皮下腫瘍モデルに対しニコチンの投与を行うと、腫瘍体積は投与21日目には929.1±180.2mm3とコントロール群470.3±73.4 mm3と比較して有意な増大を認めた。ニコチン投与群においても、NVP-BEZ235投与は有意な腫瘍縮小効果を認めた。一方、低濃度のCDDP投与では腫瘍縮小効果は確認できず、治療抵抗性獲得が示唆されたが、同時にNVP-BEZ235投与を行うと、NVP-BEZ235単剤投与と比較しても有意な腫瘍縮小効果を認めた。腫瘍におけるpS6の発現を確認した所、ニコチン・CDDPにより発現上昇、NVP-BEZ235にて発現抑制が確認された。

結論

尿路上皮癌においてニコチンがPI3K/Akt/mTOR経路を介し腫瘍増殖や抗癌剤耐性の獲得に関連があることが示唆された。また、ニコチンの影響に対し、PI3K/mTOR阻害剤の有用性が期待された。

文責 弓削 和之

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Visceral to total obesity ratio and severe hydronephrosis are independently associated with prolonged pneumoperitoneum operative time in patients undergoing laparoscopic radical nephroureterectomy for upper tract urothelial carcinoma.

Shigeta K, Kikuchi E, Hagiwara M, Hattori S, Kaneko G, Hasegawa M, Takeda T, Jinzaki M, Akita H, Miyajima A, Nakagawa K, Oya M.

Springerplus. 2015 Jun 24

目的

上部尿路上皮癌に対する腹腔鏡下腎尿管全摘除術の手術難易度に影響を与える因子について術前に評価可能な、患者背景や画像所見を用い検討を行った。

方法

当院で2003年1月から2013年12月までに腹腔鏡下または後腹膜鏡下腎尿管全摘除術を行ったcT3N0M0以下の70例を対象とした。手術難易度の指標として水腎症Grade(0から4まで5段階に分類)および内臓脂肪/体脂肪比(VFA/TFA比)を因子として含め、手術時間に与える影響を検討した。手術手技は腎の遊離を腹腔鏡下で行い、膀胱部分切除術は開腹下にGibson切開下で行った。当院で行った全ての手術時間は気腹時間、膀胱部分切除時間、そして総手術時間の3系統に分類し、難易度の基準として評価した。

結果

全症例70例のうち、内臓肥満群は40例(57.2%)、Grade3以上の水腎症を呈していた群は28例(40.0%)に認められた。平均気腹時間162.9±65.5分、総手術時間は336±120.3分であり、平均気腹時間および総手術時間は正常群と比較し内臓肥満群(内臓脂肪/体脂肪比≧0.45)で有意に延長していた(p=0.047,p=0.002)。また水腎症Grade3以上の群はGrade3未満の群と比較し、有意に気腹時間、及び総手術時間が延長した(p=0.006, p=0.002)。多変量解析の結果、内臓肥満(p=0.048)およびGrade3以上の水腎症(p=0.015)は気腹時間を延長するリスク因子であった。さらに総手術時間に関しても、内臓肥満(p<0.001) およびGrade3以上の水腎症(p=0.003)は手術時間を延長するリスク因子であった。

結論

気腹時間、総手術時間は内臓脂肪の割合、水腎症の有無に影響されると考えられ、術前に手術難易度を規定する有用な指標になりうることが示唆された。

文責 茂田 啓介

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Efficacy of treatment with a GnRH antagonist in prostate cancer patients previously treated with a GnRH agonist.

Ezaki T, Kosaka T, Mizuno R, Shinojima T, Kikuchi E, Miyajima A, Oya M.

目的

前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法(androgen deprivation therapy: ADT)において、PSA上昇後のGnRHアゴニスト(リュープロレリン、ゴセレリン)からGnRHアンタゴニスト(デガレリクス)への交替療法の効果は、まだ十分には検討されていない。今回我々は、GnRHアゴニスト投与中のPSA上昇に対する、GnRHアゴニストからGnRHアンタゴニストへの交替療法の効果を検討した。

方法

当施設において、GnRHアゴニスト投与下でPSA上昇を認め、GnRHアゴニストをGnRHアンタゴニストへ交替した治療歴をもつ患者18人を対象とした。薬剤交替による各種パラメーターの変化や、治療効果と患者背景因子との関連を、後方視的に検討した。

結果

GnRHアゴニストからGnRHアンタゴニストへ交替した際の、PSA中央値 7.9 (0.37-1709) ng/ml、テストステロン中央値0.17 (<0.08-0.81) ng/mlであり、交替3か月後のPSA中央値11.3 (0.22-2636) ng/ml、テストステロン中央値0.14 (<0.04-0.23) ng/mlであった。18例中6例でGnRHアンタゴニストへの交替1か月後にPSA値が低下し、その内の3例では交替3か月後に交替前値から50%以上のPSA低下を認めた。単変量解析にて、GnRHアンタゴニストへの交替以前に使用した薬剤数が、交替後のPSA低下を予測する因子であり、投与した薬剤が少ない方が交替後のPSA低下を期待できることが明らかとなった。

考察

PSA上昇後のGnRHアゴニストからGnRHアンタゴニストへの交替療法は、一部の患者に対して有効性が認められた。交替までに使用した薬剤数が少ないほど、交替後のPSA低下が良好な傾向があった。

文責 江ア 太佑

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Intravesical dual PI3K/mTOR complex 1/2 inhibitor NVP-BEZ235 therapy in an orthotopic bladder cancer model.

Masashi Matsushima, Eiji Kikuchi, Kazuhiro Matsumoto, Seiya Hattori, Toshikazu Takeda, Takeo Kosaka, Akira Miyajima, and Mototsugu Oya

Int J Oncol. 2015 Jul;47(1):377-83. doi: 10.3892/ijo.2015.2995. Epub 2015 May 11.

目的

近年mTOR阻害剤が腎細胞癌をはじめとした他癌種において臨床応用されている。しかしながら、尿路上皮癌におけるPI3K-Akt-mTOR pathwayが臨床上どのような意義があるのか、その詳細は未だ十分に検討されていない。そこで、新規PI3K及びmTORC1/2阻害剤であるNVP-BEZ235を用いて、in vitro、in vivo(同所性モデル)における抗腫瘍効果の検討を行った。

方法

マウス膀胱癌細胞株MBT-2に対するNVP-BEZ235の細胞傷害効果をWST assayにて検討した。次に、マウス膀胱癌同所性モデルにてNVP-BEZ235膀胱内注入療法の抗腫瘍効果の検討を行った(n=30)。また、PI3K-AKT-mTOR pathwayの阻害効果に関してwestern blottingを用い、pAkt、pS6、p4EBP1の発現の程度にて評価した。免疫染色にてpS6の発現を評価した。

結果

in vitroにおいてNVP-BEZ235各濃度(100nM、250nM、500nM、1000nM)投与によるcell viabilityは36.6 ± 10.2%、30.3 ± 8.0%、20.4 ± 6.0%、9.5 ± 4.7%と濃度依存性の抗腫瘍効果を認めた。また、pAkt、pS6、p4EBP1の発現を有意に抑制した。マウス膀胱癌同所性モデルでは、NVP-BEZ235膀胱内注入(40μM)群では膀胱重量が 72.8 ± 54.5 mgと、コントロール群206.6 ± 154.9 mgと比較して有意な低下を認めた( p<0.05)。western blottingではコントロール群と比較してpAkt、pS6、p4EBP1の発現が有意に抑制されており、免疫染色においてもpS6の発現は有意に抑制され、in vitroの結果との相同性を認めた。

結論

NVP-BEZ235膀胱内注入により有意な抗腫瘍効果を認めた。筋層非浸潤性膀胱癌に対するadjuvant治療としてNVP-BEZ235の膀胱内注入療法が新たな治療選択枝となりうることが示唆された。

文責 松島 将史

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Down-regulation of NF kappa B activation is an effective therapeutic modality in acquired platinum-resistant bladder cancer

Yujiro Ito, Eiji Kikuchi, Nobuyuki Tanaka, Takeo Kosaka, Eriko Suzuki, Ryuichi Mizuno, Toshiaki Shinojima, Akira Miyajima, Kazuo Umezawa and Mototsugu Oya

BMC Cancer. 2015 Apr 29;15:324. doi: 10.1186/s12885-015-1315-9.

背景

抗癌剤耐性に関する検討の中でNF-κBとの関連が述べられた報告がいくつか散見されているが、膀胱癌をはじめ、前立腺癌・腎細胞癌を含めた泌尿器科領域での報告はこれまでにない。本研究ではシスプラチン耐性膀胱癌に対するNF-κBをターゲットとした新たな治療戦略を検討した。

方法

ヒト浸潤性膀胱癌細胞株T24および、当研究室においてT24をシスプラチン暴露下で6か月培養して樹立した細胞株T24PR(Platinum-Resistant)を使用した。Western Blot法にて核内のp65タンパクの発現を検討し、EMSA法にてDNA結合活性を検討した。WST-1法およびTUNEL法にて、各細胞株におけるシスプラチン耐性の獲得とNF-κB阻害剤DHMEQの有効性を検討した。マウス皮下腫瘍モデルを作成し、in vivoでの有効性を検討した。

結果

T24PRにおいてはT24に比べp65のタンパク発現およびDNA結合活性が強く増強されており、DHMEQにて著明に抑制された。同様にDHMEQ単剤にて強い殺細胞効果とアポトーシスの誘導がみられた。

In vitroでの検討においてT24PRはシスプラチン以外の抗癌剤にも交叉耐性を獲得していたが、paclitaxelに対してはほとんど獲得しておらず、DHMEQとpaclitaxelを併用することでより治療効果が高まることが確認された。

T24PRマウス皮下腫瘍モデルでの検討では、control群に比べてDHMEQ単剤治療群では66.9%、DHMEQとpaclitaxel併用群では17.0%まで腫瘍体積を縮小することができた。

結論

T24とT24PRではNF-κB活性が大きく変化しており、抗癌剤耐性を獲得した膀胱がんにおける新たな治療のターゲットとなる可能性が示唆された。

文責 伊藤 祐二郎

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Therapeutic effect of intravesical administration of paclitaxel solubilized with poly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine-co-n-butyl methacrylate) in an orthotopic bladder cancer model.

Tamura K, Kikuchi E, Konno T, Ishihara K, Matsumoto K, Miyajima A, Oya M.

BMC Cancer. 2015 Apr 26;15:317. doi: 10.1186/s12885-015-1338-2.

目的

両親媒性ポリマーである2-methacryloxyethyl phosphorylcholine (MPC) polymerは難溶性抗癌剤であるパクリタキセルを溶解させる。膀胱癌同所性モデルマウスにおいて、パクリタキセル封入MPC polymer (PTX-30W)による膀胱内注入治療の効果について検討した。

方法

PTX-30Wと、一般的に市販されている、ヒマシ油Cremophorを溶媒としたパクリタキセル(PTX-Cre)の効果を比較検討した。マウス膀胱癌細胞株MBT-2を用いて作成した膀胱癌同所性モデルマウスに、PTX-30WまたはPTX-Creの膀胱内注入治療を6回行い、22日目に両群の膀胱腫瘍重量を測定した。さらに膀胱内注入30分後の膀胱腫瘍組織内パクリタキセル濃度をLC-MS/MSで測定した。

結果

PTX-30W治療群ではPTX-Cre治療群と比較して膀胱腫瘍の生育が有意に抑制された。また、PTX-30W膀胱注入後の膀胱腫瘍組織内パクリタキセル濃度はPTX-Cre注入群よりも有意に高かった。

結論

PTX-30Wの膀胱内注入治療はパクリタキセルの膀胱腫瘍組織 への取り込みを増加させ、腫瘍の生育を抑制すると考えられた。PTX-30Wの膀胱内注入治療薬としての可能性が示唆された。

文責 田村 高越

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Solifenacin or mirabegron could improve persistent overactive bladder symptoms after dutasteride treatment in patients with benign prostatic hyperplasia.

Maeda T, Kikuchi E, Hasegawa M, Ishioka K, Hagiwara M, Miyazaki Y, Shinojima T, Miyajima A, Oya M.

Urology. 2015 May;85(5):1151-5. doi: 10.1016/j.urology.2015.01.028. Epub 2015 Mar 12.
PMID:25770728

目的

男性前立腺肥大症患者のdutasteride(DUT)治療後に残存するOAB症状に対してどのような治療を行うかについては議論がわかれている。今回、我々はDUT治療後のOAB症状に対しsolifenacin(SOL) またはmirabegron(MIR) を追加処方した治療成績ならびに有害事象について評価、検討を行った。

方法

前立腺肥大症に対し、DUTを6か月以上投与された後に残存するOAB症状(OABSS5点以上、OABSS Q3 2点以上)を有する50人を対象とした。SOL5rもしくはMIR50rを処方し、4週間、12週間後のIPSS、OABSSにて効果判定を行った。残尿の変化ならびに有害事象についても評価を行った。

結果

SOLもしくはMIR内服直前の全50例の前立腺重量、IPSS、OABSSは39.0ml、17.6点、8.1点であった。SOL5r治療群では、4週間後、12週間後に有意にIPSS、OABSS、OABSSQ3の低下を認めた(12週時点で、-3.1点、‐2.7点、‐1.3点;P <.05)が、25人中4人は有害事象のため治療継続ができなかった。MIR50r治療群は、全例治療完遂可能であり、4週間後にIPSS、OABSSの低下を認め、12週間後にIPSS,OABSS、OABSSQ3の低下を認めた(-3.0点, -2.5点, -0.9点; P <.05)。100ml以上残尿が増加する症例はSOL群に2例認めたが、MIR群には認めなかった。

結論

大きな前立腺肥大症に対しDUT治療後に残存するOAB症状に対し、SOLもしくはMIRの追加投与は排尿に関する症状を緩和させる可能性が示唆された。

文責 前田 高広

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Prognostic Impact of Renin-Angiotensin System Blockade on Renal Cell Carcinoma After Surgery.

Miyajima A, Yazawa S, Kosaka T, Tanaka N, Shirotake S, Mizuno R, Kikuchi E, Oya M.

レニンーアンギオテンシン系(RAS)が悪性腫瘍の血管新生の制御に関与するという概念に基づき、当教室ではアンギオテンシン1型受容体阻害剤によるRAS阻害の抗腫瘍効果について様々な動物実験モデル(腎癌肺転移モデル: Miyajima A et al. Cancer Res, 2002; 前立腺癌:Kosaka T et al. Prostate, 2007; 膀胱癌皮下腫瘍モデル: Kosugi M et al. Clin Cancer Res, 2006)で示してきた。さらには臨床的に前立腺癌ならびに尿路上皮癌でRAS阻害が予後に寄与するという知見を報告してきた(Shirotake et al. Am J Pathol, 2012, Tanaka et al. Br J Cancer, 2012)。しかしながら、腎癌発症のリスク因子の一つとして高血圧が知られているものの、腎癌術後患者を対象にRAS阻害剤の内服がその予後に影響を与えるのか未だに検討がなされていない。
本研究では、腎癌術後患者557例(pT1-4N0M0)を対象としてRAS阻害剤内服の有効性についてレトロスペクティブに検討を行った。557例のうち204例が降圧剤を内服し、そのうちの104例がRAS阻害剤を内服していた。RAS阻害剤内服群はそれ以外内服群に比して有意に癌特異的生存率は高かった(96.8% vs. 89.8%)。多変量解析の結果、RAS阻害剤内服の有無、腫瘍径、腫瘍grade、微小血管浸潤が癌特異的生存率を予測する独立した危険因子であった。
以上より、RAS阻害剤の内服は腎癌術後治療の選択肢となりうることが示唆された。

文責 宮嶋 哲

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HOW DOES VISCERAL OBESITY AFFECT SURGICAL PERFORMANCE IN LAPAROSCOPIC RADICAL NEPHRECTOMY?

Yuge K, Miyajima A, Jinzaki M, Kaneko G, Hagiwara M, Hasegawa M, Takeda T, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M

Jpn J Clin Oncol. 2015 Apr;45(4):373-7. doi: 10.1093/jjco/hyv001. Epub 2015 Jan 30.

背景

今まで、我々は腹腔鏡下手術における手術時間と肥満、特に内臓脂肪型肥満との関連につき研究をしてきた。しかし一方で、腹腔鏡下手術の手術時間は術者の経験と技術の違いも影響していると考えている。我々は、内臓脂肪型肥満の腹腔鏡下腎摘除術を施行される患者において、術者の経験の違いがどのように影響を与えるのか調査した。

方法

2006年1月から2012年2月までに当院で腹腔鏡下腎摘除術を施行された167症例を対象とした。内臓脂肪面積(VFA)はCTにおける臍の高さでの脂肪の面積を用いた。VFA≧100cm2を内臓脂肪型肥満と定義した。また、術者は計6名で行われており、内2名は年間50症例以上の腹腔鏡下手術を執刀しているエキスパート群として定義した。我々は手術時間と関連のある因子を統計学的に分析した。

結果

エキスパート群は77症例であり、平均手術時間は167.0分であった。一方、非エキスパート群は227.5分であった。単変量解析においてはどちらの群においても内臓脂肪型肥満は手術時間を延長させる因子であった。また、多変量解析において、非エキスパート群はhigh T stageと内臓脂肪型肥満が独立した手術時間延長の危険因子であった (p=0.037, HR:10.41, p=0.004, HR: 5.15)。一方、エキスパート群においてはhigh T stageのみが独立した危険因子であった(p=0.039, HR: 4.33)。

結論

内臓脂肪型肥満は腹腔鏡下腎摘除術において手術時間の延長の危険因子であった。また、特に経験の浅い術者において、内臓脂肪型肥満の影響は強くなることが示唆された。

文責 弓削 和之

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.36

Bisebromoamide, an extract from Lyngbya species, induces apoptosis through ERK and mTOR inhibitions in renal cancer cells.

Suzuki K, Mizuno R, Suenaga K, Teruya T, Tanaka N, Kosaka T, Oya M.

Cancer Med. 2013 Feb;2(1):32-9. doi: 10.1002/cam4.53. Epub 2013 Feb 3.

目的

ビセブロモアマイドは海洋シアノバクテリアのリングビア種から抽出、精製されたペプチドであり、2009年に新規細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)リン酸化阻害剤として発表された。ERKはRaf/MEK/ERK経路の下流に位置するキナーゼの一種であり、様々な癌腫でその発現が亢進していると言われている。本研究はビセブロモアマイドのヒト腎癌細胞株に対する抗腫瘍効果を検証することを目的とした。

方法

769−P、786−Oの2種の腎癌細胞株を用いた。薬剤感受性試験で殺細胞効果を検討し、ウエスタンブロット法でのRaf/MEK/ERK経路とホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)/Akt/哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)経路の2つのシグナル伝達におけるキナーゼに対する阻害効果を検討した。タネル法とBrdU法でアポトーシスの判定、細胞周期の検討をした。

結果

1μmol/L, 10μmol/Lのビセブロモアマイド投与後48時間、72時間で2種細胞株における生存率は著明に低下した。タネル法とBrdU法の結果、1μmol/Lのビセブロモアマイド投与後72時間で、それぞれアポトーシス誘導、sub G1細胞の増加を認めた。ウエスタンブロットの結果、ERKのリン酸化が阻害されていたが、さらにAktのリン酸化も阻害されていた。mTORとp70 S6のリン酸化についても同様の結果が示された。

結論

ビセブロモアマイドは腎細胞癌に対して、Raf/MEK/ERK経路とPI3K/Akt/mTOR経路の2つのシグナル伝達を阻害することにより抗腫瘍効果をもつ可能性が示唆された。

文責 鈴木 賢次郎

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Limited in vitro efficacy of CYP17A1 inhibition on human castration resistant prostate cancer.

Kosaka T, Miyajima A, Yasumizu Y, Miyazaki Y, Kikuchi E, Oya M. Department of Urology, Keio University School of Medicine

Steroids. 2014 Dec;92:39-44.

目的

前立腺癌(Prostate Cancer: PCa)が去勢抵抗性前立腺癌(castration resistant prostate cancer: CRPC)へと進展した場合においてもアンドロゲンーアンドロゲン受容体(Androgen-Androgen Receptor:AR axis)経路は中心的な生理活性を有し、治療標的として有用なことが明らかになってきた。しかしながらリガンドの供給源としてのCYP17Aの生化学的解析はほとんどなされていない。本研究は、PCaの進展過程に着しCRPCにおけるCYP17A1(P45017A1)活性の生化学的解析と、CYP17A1阻害効果について解析した。

方法

ヒトPCa細胞株LNCaP、ヒトCRPC細胞株C4-2と、C4-2を6ヶ月間アンドロゲン除去血清で培養し新規に樹立したC4-2AT6を解析の対象とした。アンドロゲン産生系の酵素活性の同定と解析のために、安定同位体13Cで修飾したステロイド前駆体を投与し、その代謝産物を液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)で解析した。

結果

CYP17A1の発現はC4-2AT6におてC4-2に比して有意に亢進していた。CYP17A1の酵素活性の解析のため、13C-[2,3,4]-progesterone:13C-Progを培養上清に添加し、13C-[2,3,4]-17- hydroxyprogesterone :13C-17OHPと13C-[2,3,4]-androstenedione :3C-AdioneをLC/MS/MSで測定した。各細胞株において13C-17OHP、13C-Adioneがそれぞれ測定可能で13C-Adione /13C-17OHP比を算出し17,20-lyaseの酵素活性の指標としたところ、C4-2AT6ではその比率はC4-2に比して有意に上昇しており、17,20-lyase活性の変遷が認められた。CYP17A1阻害剤としてin vitroにおいてアビラテロンを投与したところ、LC/MS/MS解析にて、CYP17A活性が抑制されていることが確認された。しかしながら、ヒト臨床での有効血中濃度範囲内のアビラテロンの投与では、LNCaPでは濃度依存的な増殖抑制効果が認められたが、C4-2やC4-2AT6では、増殖抑制が認められなかった。

結論

CYP17A1阻害剤はCRPCにおけるCYP17A1の活性を生化学的には阻害するが、直接的な抗腫瘍効果は極めて限定的であることが示唆された。

文責 小坂 威雄

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Activation of aryl hydrocarbon receptor promotes invasion of clear cell renal cell carcinoma and is associated with poor prognosis and cigarette smoke.

Ishida M, Mikami S, Shinojima T, Kosaka T, Mizuno R, Kikuchi E, Miyajima A, Okada Y, Oya M.

Int J Cancer. 2014 Dec 19. doi: 10.1002/ijc.29398. [Epub ahead of print]

背景及び目的

外因性生理活性物質の受容体である芳香族炭化水素受容体(AhR)は、発癌物質の活性化や活性酸素の産生に関与するとされている。本研究では、腎細胞癌の進展におけるAhRの役割について検討を行った。

対象と方法

腎細胞癌切除検体120例のパラフィン切片を用いて、AhRの発現を免疫組織学的に検討した。AhRの発現と臨床病理学的因子との相関を検討し、多変量解析で予後との関連を調べた。続いて、腎細胞癌の細胞株(786-O、ACHN)にAhRのリガンドであるindirubinおよび2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)を添加して培養し検討を行った。免疫蛍光染色で、リガンド投与によるAhRの核内移行を確認した。ChIP assayで、AhRがCYPのプロモーター領域に集積することを確認した。CYP、MMP発現の変化を、定量PCR法を用いて検討した。リガンド投与によるAhRの活性化が浸潤能に与える影響を、MatrigelTMを用いたinvasion assayを行い測定した。さらに、siRNAを導入することでAhR発現を抑制し、CYPおよびMMPの発現の変化、浸潤能への影響も検討した。

結果

AhRは淡明細胞癌の核に多く認められ、病期、組織学的悪性度と有意に相関した。また、AhRの発現は無増悪生存率および疾患特異的生存率を予測する独立した因子であった。786-Oにindirubinを投与する事で、AhRは核内に移行しCYP1A1のプロモーター領域に集積することが明らかになった。indirubinの投与により786-OおよびACHNのAhRの発現は上昇し、CYP1A1、CYP1B1も上昇した。また、MMP-1およびMMP-9の発現上昇を介して細胞の浸潤能を亢進させた。786-Oにおいては、TCDDを投与することで、indirubinと同様の効果が認められた。さらに、786-OにAhR に対するsiRNAを導入する事により、786-OのAhR、CYP1A1、CYP1B1、MMP-1、MMP-9の発現が低下した。siRNAを導入した786-Oは、コントロールと比較して有意に浸潤能が低下した。

結論

これらの結果は、淡明細胞癌の浸潤においてAhRが重要な役割を果たしていることを示している。また、AhRの活性化を阻害することは淡明細胞癌患者の有効な治療法の開発につながることが示唆された。

文責 石田 勝

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Visceral obesity is associated with better recurrence-free survival after curative surgery for Japanese patients with localized clear cell renal cell carcinoma.

Kaneko G, Miyajima A, Yuge K, Yazawa S, Mizuno R, Kikuchi E,
Jinzaki M, Oya M.

Jpn J Clin Oncol. 2014 Nov 23. pii: hyu193. [Epub ahead of print]

背景

肥満は腎細胞癌発生の危険因子として確立しているが、肥満と腎細胞癌の予後の関連は充分に解明されていない。BMIを肥満の指標として用いた報告が散見されるが、統一した見解を得られていない。近年、内臓脂肪は癌の増殖、進展に関与する種々の液性因子を分泌する最大の内分泌臓器であり、肥満と癌の予後の関連は内臓肥満の程度によって検討するべきと考えられている。限局性腎細胞癌に対する根治術後の再発と内臓肥満の関連について検討した。

対象と方法

限局性腎細胞癌に対し根治術を施行した285例(腎摘除術:176例、腎部分切除術:109例)を対象とした。術前CTで臍レベルの内臓脂肪面積(Visceral fat area(VFA))を算出した。年齢、性別、BMI、VFA、術前CRP値、組織型、Fuhrman nuclear grade、pT stage、腫瘍径、微小血管浸潤と非再発生存期間の関連をCox比例ハザードモデルにて検討した。

結果

平均観察期間36.7ヶ月に29例(10.2%)に再発を認めた。High VFA群(≥120cm2)とlow VFA群(<120cm2)の年齢、術前CRP値、Fuhrman nuclear grade、pathological T stage(pT stage)、腫瘍径、微小血管浸潤に有意な差は認めなかった。High VFA群の5年非再発生存率はlow VFA群と比して有意に高かった(91.3% vs. 76.9%, P = 0.037)が、多変量解析でVFAは再発を予測する独立因子ではなかった。

淡明細胞癌のみを対象とした解析では、28例(11.6%)に再発を認めた。High VFA群の5年非再発生存率は88.7%であり、low VFA群の71.0%と比して有意に高かった(P = 0.043)。また多変量解析でlow VFAは、術前CRP値、Fuhrman nuclear grade、腫瘍径、微小血管浸潤と同様に再発を予測する独立因子であった(P = 0.042、Hazard ratio = 1.974)が、BMIは再発を予測する独立因子ではなかった。

さらにorgan confined(pT1、pT2)の淡明細胞癌のみを対象としたサブグループ解析においても、high VFA群の非再発生存率はlow VFA群と比して有意に低く(92.0 % vs. 74.7%、P = 0.042)、多変量解析でlow VFAは、腫瘍径と微小血管浸潤と同様に再発を予測する独立因子であった(P = 0.006、Hazard ratio = 4.281)。

結語

内臓肥満は限局性淡明腎細胞癌に対する根治術後の良好な非再発生存を予測する独立因子であり、BMIより有用な指標であると考えられた。

文責 金子 剛

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Laparoendoscopic single-site adrenalectomy versus conventional laparoscopic adrenalectomy: a comparison of surgical outcomes and an analysis of a single surgeon's learning curve.

Hirasawa Y, Miyajima A, Hattori S, Miyashita K, Kurihara I, Shibata H, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M.

Surg Endosc. 2014 Oct;28(10):2911-9. doi: 10.1007/s00464-014-3553-3. Epub 2014 May 23.

背景

副腎良性腫瘍に対する多孔式腹腔鏡下副腎摘除術(Conventional laparoscopic adrenalectomy :LA)はgolden standardとなっている。近年単孔式腹腔鏡下副腎摘除術( Laparoendoscopic single-site adrenalectomy :LESS-A)がより侵襲の少ない術式として開発されてきている。

方法

慶應義塾大学病院において単一術者の施行した70例のLESS-Aを140例のLAと、その周術期成績について統計学的に比較検討した。更にこの術者のLESS-Aにおける learning curveについて検討を行った。

結果

年齢、性別、BMI、腹部手術既往歴、手術側、腫瘍径に関して2群間で統計学的有意差を認めなかった。手術時間、気腹時間、出血量、輸血の有無、Hb減少量、鎮痛薬使用量、術後飲水開始期間、開腹率、合併症率等の周術期成績に関しても2群間で統計学的有意差を認めなかった。術死、再手術症例は存在しなかった。LESS‐A70症例の手術時間を検討すると、手術時間は徐々に減少し、12例で平衡に達した。但しこの初期12例では合併症、及び術式変更を要さなかった。多変量解析では、術者の経験不足、腫瘍径が大きい事が手術時間を延長する因子であった。

結論

LESS-Aの周術期成績はLAと遜色なく、安全に施行し得た。当院でのLESS-Aの導入は安全に行われた。LESS-Aの適応基準は未だ議論の余地があるが、コスメティックを重視する症例では特に有用な手術法と考えられる。

文責 服部 盛也

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Impact of an adjuvant chemotherapeutic regimen on the clinical outcome in high-risk patients with upper tract urothelial carcinoma: A Japanese multi-institution experience.

Shirotake S, Kikuchi E, Tanaka N, Matsumoto K, Miyazaki Y, Kobayashi H, Ide H, Obata J, Hoshino K, Kaneko G, Hagiwara M, Kosaka T, Kanao K, Kodaira K, Hara S, Oyama M, Momma T, Miyajima A, Nakagawa K, Hasegawa S, Nakajima Y, Oya M.

J Urol 2014 Oct 13 [Epub ahead of print]

目的

上部尿路上皮癌における術後補助化学療法の有用性については議論がわかれている。高リスク上部尿路上皮癌に対する術後補助化学療法のレジメンに着目してその臨床的意義について多施設共同後方視的検討を行った。

方法

慶應義塾大学泌尿器科及び同関連施設において1993年から2011年までの間に上部尿路上皮癌と診断され腎尿管全摘術が施行された839例を対象とした。化学療法(MVAC療法、GC療法)別に臨床的予後の比較検討を行った。

結果

無再発生存期間および癌特異的生存期間における独立予後因子はpT stage、tumor grade、lymphovascular invasion(LVI)、lymph node involvement (LNI)であった。これら4因子のうち3因子以上を有する229症例を高リスク群と定義した。高リスク群において術後補助化学療法の有無による無再発生存期間に有意差を認めなかった(P=0.135)。しかし化学療法別に分類すると、MVAC群(46例)の2年無再発生存率は47.9%であり、GC群(31例)の21.4%(P=0.022)や無治療群の39.6%(P=0.039)に比較して有意に良好な結果を得た。癌特異的生存率においても類似した結果を得た。

結論

上部尿路上皮癌の高リスク群を定義(pT3-4、tumor grade 3、LVI陽性、LNI陽性のうち3因子以上を有する)し、その中でMVAC群はGC群や術後無治療群に比較して有意な予後改善を認めた。上部尿路上皮癌における術後補助化学療法の有用性については、適格症例となる高リスク群の選定のみならず化学療法レジメンごとの詳細な検討が必要であると考えられた。

文責 城武 卓

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Predictive factors for severe and febrile neutropenia during docetaxel chemotherapy for castration-resistant prostate cancer.

Shigeta K, Kosaka T, Yazawa S, Yasumizu Y, Mizuno R, Nagata H, Shinoda K, Morita S, Miyajima A, Kikuchi E, Nakagawa K, Hasegawa S, Oya M.

Int J Clin Oncol. 2014 Sep 9. [Epub ahead of print]

目的

本研究は、ドセタキセル治療での高度の好中球減少症(Severe Neutropenia; SN)、または発熱性好中球減少症(Febrile Neutropenia; FN)発生の予測因子について解析し、より安全な化学療法治療を提供することを目的とした。

方法

当院で2008年1月から2012年9月までにドセタキセル治療を行った去勢抵抗性前立腺患者の内、継続的に3コース以上を投与可能であった95名、合計258コースを対象とした。患者にはドセタキセル75mg/uを3-4週毎に投与し、高度の好中球減少症(SN)、発熱性好中球減少(FN)発生の有無を後方視的に調査し、各臨床パラメータと比較した。SNはgrade4の好中球減少症(Absolute Neutrophil Count≦500)、またFNはgrade3以上の好中球減少(Absolute Neutrophil Count≦1000)かつ38.3℃以上の発熱を満たす状態と定義した。

結果

患者平均年齢は72.6±6.4歳、平均PSAは135.4±290.9 ng/mlであった。患者背景として、高血圧、高脂血症、糖尿病、慢性呼吸器疾患の基礎疾患を1つ以上有する者は、95名中55名(57.9%)存在した。全患者95名中、70名(73.7%)が骨転移を有しており、骨転移の程度はEOD scoreにてgradingした。

ドセタキセル投与初回3コースの内、72.6%の患者がSN、9.5%の患者がFNを認めた。患者解析(n=95)では、単変量解析の結果、年齢≧75、基礎疾患の数≧1または2以上、放射線治療歴がSNまたはFN群に有意差を認めた。また多変量解析の結果、年齢≧75、前立腺癌への放射線治療歴がSNまたはFNの独立した予測因子であった。これは、SN発症群(n=69) vs SN非発症群(n=25)、FN発症群(n=9) vs FN非発症群(n=86) のサブグループ解析においても年齢≧75、放射線治療歴は独立した予測因子であり、同様の結果であった。一方、コース解析(n=258)において、投与前血液検査パラメータや骨転移の有無、程度はSN、FNの発症には有意な関連を認めなかった。

結論

年齢75歳以上もしくは前立腺癌に対する放射線治療歴は、ドセタキセル投与に伴うSNまたはFNの予測因子であり、これら有害事象の発症を念頭においた注意深いフォローの必要性が示唆された。

文責 茂田 啓介

(指導医からのコメント)

ドセタキセルは去勢抵抗性前立腺癌患者(CRPC)に対する標準治療としての位置づけは、今後も不変と考えられます。発熱性好中球減少症の発生による重篤な合併症は、減量や投与間隔の延長、投与中止の要因となっています。本研究は後ろ向き研究ですが、CRPC患者に対するドセタキセル治療の際の有害事象を予測する有用な指標が明らかとなったことで、今後外来化学療法施行に際し、好中球減少症の発生のリスクの高い患者群を選別し、予防的G-CSF製剤投与の最適化に際して大変有用と考えられます。

文責 小坂 威雄

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Expression level of dihydropyrimidine dehydrogenase is associated with clinical outcome in patients with T1G3 bladder cancer treated with Bacillus Calmette-Guerin.

Ide H, Kikuchi E, Mikami S, Miyajima A, Oya M.

BMC Res Notes. 2014 Sep 13;7:646. doi: 10.1186/1756-0500-7-646.

目的

近年、DPD高値の膀胱癌細胞において、5-FUと強力なDPD阻害剤の合剤を使用する事で、有意な抗腫瘍効果が認められた。しかしながら、DPDを含む5-FU代謝酵素と膀胱癌の予後に関する報告は少ない。更に、BCGで治療されたT1G3膀胱癌における報告は見当たらない。そこで、パラフィン包理組織からRNAを測定できるDanenberg tumor profile (DTP)法を用いて、BCGで治療されたT1G3膀胱癌の5-FU代謝酵素を測定した。

方法

本院でBCG治療されたT1G3膀胱癌28例を対象とした。観察期間中央値は39ヵ月(3-159ヵ月)であった。DTP法を用い、5-FU代謝酵素であるTS、DPD、OPRTを測定した。

結果

対象28例中13例(46.4%)に再発、5例(17.9%)に進展を認めた。DPD高値と再発、進展は有意な関連を認めた(p=0.048、p=0.045)。しかし、TS、OPRTと再発、進展との関連は認められなかった。DPD高値群の無再発生存率はDPD低値群に比べ、有意に低かった。DPD低値群の2年、5年無再発生存率は、88.9%、74.1%であるのに対し、DPD高値群の2年、5年無再発生存率は、61.3%、36.8%であった。TS、OPRTと無再発生存率との有意な関連は認められなかった。

結論

BCG治療されたT1G3膀胱症例において、DPDは、再発や進展と有意に関連している。

文責 井手 広樹

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Unidirectional barbed suture for vesicourethral anastomosis during laparoscopic radical prostatectomy.

Takeda T, Miyajima A, Kaneko G, Hasegawa M, Kikuchi E, Oya M.

Asian J Endosc Surg. 2014 Aug;7(3):241-5.

目的

腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術(LRP)における不確実な膀胱尿道吻合は、尿道カテーテルの長期留置の原因となり患者のQOLの低下につながる。本検討では、膀胱尿道吻合における一方向性有棘縫合糸(V-Loc 180、Covidien)の有用性を検討した。

方法

2012年1月から10月までに、限局性前立腺癌に対して施行したLRPの膀胱尿道吻合において、V-Locを使用した30名を、従来のMonocrylを使用した30名と比較検討した。手術時間、吻合時間、出血量、運針数、合併症、尿道カテーテル留置期間、入院期間、術後の尿禁制に関して検討を行った。

結果

手術時間はV-Loc群で177.1±29.4分、Monocryl群で184.2±40.3分であり、有意差は認めなかったが、吻合時間はV-Loc群(13.2±2.3分)がMonocryl群(19.1±3.3分)に比して、有意に短かった。また、運針数はV-Loc群(11.4±1.3)がMonocryl群(10.6±1.6)より有意に多く、術後3か月後の尿禁制はV-Loc群がMonocryl群に比して有意に改善した。出血量、合併症、尿道カテーテル留置期間、入院期間は両群で有意差を認めなかった。

結論

V-Locはクリップを使用したり結節を作ることなく張力を維持した確実かつ迅速な吻合が可能であり、LRPの膀胱尿道吻合において非常に有用であると考えられた。

文責 武田 利和

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Potent increased risk of the initiation of DNA replication in human prostate cancer with the use of 5α-reductase inhibitors.

Kosaka T, Yasumizu Y, Miyazaki Y, Miyajima A, Kikuchi E, Oya M. Department of Urology, Keio University School of Medicine

Am J Clin Exp Urol. 2014 Jul 12;2(2):136-44.

目的および方法

前立腺癌予防に関する、2つの大規模二重盲検無作為化比較試験Prostate Cancer Prevention Trial (PTPC)試験(フィナステリド)とReduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events (REDUCE)試験(デュタステリド)において、5α還元酵素阻害剤(5ARI)は低悪性度前立腺癌の発癌を抑制していた。しかし一方で、5ARI使用群において、両方の試験とも高グリソンスコアの前立腺癌の発癌が有意に多いという意外な結果であった。高悪性度前立腺癌の発癌を誘導する危険性が否定できないという結果を受けて、これらの臨床試験や5α還元酵素阻害剤の使用に関して、現在、世界中で議論され、尚も意見が分かれている。我々は、今までの先行研究においてがん進展過程に着目したアンドロゲン産生系の解析から、去勢抵抗性前立腺癌(Castration resistant prostate cancer: CRPC,)においては、5α-還元酵素活性の低下とDHTへの細胞増殖における依存度の低下を報告して来たが、5ARIが悪性度の高い癌を誘発する可能性に関する分子機構は不詳である。そこで、本研究では、DHTや5ARIが細胞増殖にもたらす効果について、特にDNA複製に関連するpre-replication complex (Pre-RC) の構成因子であるCDC6, CDT1, やMCM2-7の発現を解析した。LNCaP, C4-2, C4-2AT6、3つの細胞株を研究の対象とし、5ARIとしてfinasteride と dutasterideを用いた。

結果

DHTの投与はLNCaPにおいて濃度依存的に細胞の増殖を誘導し、その際に、CDC6, CDT1,やMCM2-7の発現上昇と相関していた。一方C4-2AT6においては、DHTの投与は細胞増殖を濃度依存性に抑制し、その際に、CDC6, CDT1やMCM2-7の発現低下を伴っていた。ヒト臨床での有効血清薬物濃度の範囲内の5ARI投与は、 LNCaPにおいて細胞増殖活性を低下させ、その際にCDC6の発現低下が認められたが、C4-2やC4-2AT6では有意な増殖抑制効果は認められず、CDC6の発現はむしろ誘導されていた。

結論

5ARIは悪性度の高い前立腺癌におけるpre-replication complex (Pre-RC) の構成因子である特にCDC6の発現修飾を介して、低悪性度と相反するDNA複製機構の制御に関与する可能性があることが示唆された。

文責 小坂 威雄

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Optimal timing of hormonal therapy for prostate-specific antigen recurrence after radical prostatectomy.

Matsumoto K, Mizuno R, Tanaka N, Ide H, Hasegawa M, Ishida M, Hayakawa N, Yasumizu Y, Hagiwara M, Hara S, Kikuchi E, Miyajima A, Nakagawa K, Nakajima Y, Nakamura S, Nakashima J,Oya M.

Med Oncol. 2014 Jul;31(7):45.

目的

前立腺全摘後PSA再発に対する、最適なホルモン療法導入のタイミングの決定を目的とした。

対象と方法

慶應大学病院および関連病院計5施設において前立腺癌に対し、前立腺全摘後PSA再発を認め、ホルモン療法を施行した患者156例を対象とし、ホルモン療法導入のタイミング(その時のPSA値)と術後biochemical progression (castration-resistance)までの期間を検討した。

結果

多変量解析において、Gleason grade 8以上 および PSA倍加時間6ヶ月未満が独立した予後因子であった。ホルモン療法開始時のPSA値で症例を5群(-0.5, 0.5-1.0, 1.0-2.0, 2.0-4.0, 4.0-)に分けて解析を行った。高リスク群 (Gleason score 8以上かつPSA倍加時間6ヶ月未満)においては、PSA1以下でホルモン療法を導入した症例の方がPSA1を超えてからホルモン療法を開始したものに比べ有意に予後良好であった。一方それ以外の中低リスク群においては、ホルモン療法導入時PSA値のcut-off値はPSA4であった。

結論

Gleason score8以上および PSA 倍加時間6ヶ月未満が,術後ホルモン療法を施行した患者のbiochemical progressionに対する独立した予後因子であった。高リスク群においては、PSA値が1を超える前にホルモン療法を導入することにより予後を改善できる可能性が考えられた。一方、中低リスク群では、ホルモン療法導入はより遅らせることが出来る可能性が示唆された。

文責 松本 一宏

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A Multi-Institutional Validation of the Prognostic Value of the Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio for Upper Tract Urothelial Carcinoma Treated with Radical Nephroureterectomy.

Tanaka N, Kikuchi E, Kanao K, Matsumoto K, Shirotake S, Miyazaki Y, Kobayashi H, Kaneko G, Hagiwara M, Ide H, Obata J, Hoshino K, Hayakawa N, Kosaka T, Hara S, Oyama M, Momma T, Nakajima Y, Jinzaki M, Oya M.

Ann Surg Oncol. 2014 Jun 10. [Epub ahead of print]

目的

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における好中球-リンパ球分画(neutrophil-lymphocyte ratio; NLR)上昇と予後の関係を後ろ向きに検討した。

方法

慶應義塾大学病院及びその関連施設において腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者の内、術前NLRの評価が可能であった665例を対象とした。平均観察期間は28ヶ月であった。臨床病理組織学的因子並びにNLRと予後を多変量解析により統計学的に検討した。 本研究ではNLR>3.0をNLR上昇と定義した。

結果

術前NLR上昇は184例(27.7%)で認められた。術前NLR上昇は有意に切除標本におけるGrade、pT stage、LVI、リンパ節転移陽性の有無と関係した。5年非再発/癌特異的生存率はNLR上昇群:57.0%/60.2%であり、NLR正常群:69.2%/77.3%と有意差を認めた。多変量解析の結果、病理学的因子と共に術前NLR上昇は再発(P= 0.037; hazard ratio (HR) 1.38)・癌死(P = 0.036;, HR 1.47)を予測する独立した危険因子であった。

結論

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者では、術前NLR上昇は病理学的因子(Grade、pT stage、LVI、リンパ節転移陽性の有無)と有意に関係し、また再発/癌死を予測する独立した危険因子であった。

文責 田中 伸之

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Therapeutic enhancement of S-1 with CPT-11 through down-regulation of thymidylate synthase in bladder cancer.

Ide H, Kikuchi E, Hasegawa M, Hattori S, Yasumizu Y, Miyajima A, Oya M.

Cancer Med. 2013 Aug 2;4:488-95. doi: 10.1002/cam4.95.

目的

5-FUの標的酵素であるTSは、膀胱癌を含む様々な癌の予後因子である。近年、膀胱癌において、5-FU系抗癌剤であるS-1の有用性が報告されたが、TS高値の細胞株において有意な抗腫瘍効果は認められなかった。そこで、膀胱癌においてTSをdown-regulationさせることで、S-1の効果が増強されるかどうか検討を行った。

方法

最初に膀胱癌細胞株であるKU-19-19のTS値を測定し、siRNAにてTSをdown-regulationさせた細胞で、5-FUの感受性の評価を行った。次に様々な抗癌剤を投与したKU-19-19のTS値を測定した。最後にTS値をdown-regulationさせたCPT-11によるS-1の抗腫瘍効果の増強をin vitro、in vivoで評価した。

結果

KU-19-19のTS、DPD値は、53.3 ng/mg、80.3 ng/mgであった。TSをdown-regulationさせることでKU-19-19の5-FUの感受性は有意に増強された。また、SN-38(CPT-11の活性代謝物)は用量依存的にTSのmRNAを低下させた。In vitroにおいて、5-FUとSN-38の併用療法は単独療法に比べ有意に細胞増殖が抑制された。また、TSをdown-regulationされた細胞においては、併用療法における相乗および相加効果は認められなかった。In vivoにおいても、S-1とCPT-11の併用療法は単独療法に比べ、有意に腫瘍増殖を抑制した。

結論

CPT-11はKU-19-19のTS値をdown-regulationさせ、S-1の効果を増強させた。したがって、CPT-11、S-1の併用慮法は、膀胱癌における新たな治療法となりえる事が示唆された。

文責 井手 広樹

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